2024年04月19日( 金 )

崖っぷちの筑紫女学園、崩壊の危機に居直る笠・長谷川派

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約10億円の補助金交付に影響

筑紫女学園大学

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 理事会運営をめぐる混乱が続いている学校法人 筑紫女学園が、存続さえ危ぶまれる危機的状況に陥っていることがわかった。福岡地裁の決定により、昨年(2016年)8月31日付で、理事長としての職務執行が停止されている長谷川裕一氏が、教職員宛てで1月23日に出した所感によると、理事会の正常化がなされない場合、国(文部科学省)および福岡県からの約10億円の経常費補助金の交付が受けられないほか、来年度の予算編成、人事、各種契約の締結に支障をきたすという。また、昨年11月、文部科学大臣が認める評価機関が実施した大学認証評価の調査報告案で、大学運営や理事会機能について、厳しい指摘がなされており、「大学として『不適合』と見なされる可能性がある」(学校関係者)という。

 発端は、ほとんどの教職員の反発を招いた笠信暁理事長の学園経営にあった。理事会内は、長谷川氏を含む笠氏の支持派(以下、笠・長谷川派)と反対派に分かれ、昨年3月25日には、笠氏の理事長解任案が反対派から提出される事態に至る。その際、笠・長谷川派は示し合わせて欠席し、笠氏の理事長解任を逃れた。そして昨年6月10日の理事会で、新理事の選任によって反対派を一掃。笠・長谷川派の仏壇業界最大手(株)はせがわの相談役・長谷川裕一氏を新理事長に擁立した。しかし、昨年7月8日、反対派の理事2名が、6月10日の理事選任決議を無効として仮処分を申し立てる。福岡地裁は決議を無効と判断し、8月31日付で「理事長長谷川裕一の職務執行停止」が決定された。(詳細は関連記事参照

新理事選任決議の無効を認める

 最悪の事態を回避するためのタイムリミットを「本年度の補助金の交付決定が判断される2月中旬~下旬」とする長谷川氏。1月23日の所感のなかで、昨年6月10日の新理事選任決議を無効とする部分について認諾する方針を示し、新理事選任決議のやり直しを行う意思を示した。だが、同時に、仮処分の申し立てを行った反対派理事2名が学園の危機的状況を招いていると主張。この主張に対し、教職員側から反発の声があがっている。

 筑紫女学園三学部長は1月25日、長谷川氏の所感に対し、複数の誤認があるとして同氏宛ての意見表明文を発表した。主な指摘は以下の通り。(1)反対派理事2名からは和解の提案がなされたが長谷川氏側は受け入れず、また、職務執行停止の決定が下された翌日(昨年9月1日)に、不服申し立てを行った。(2)11月25日に不服申し立てが却下されたが、抗告を高等裁判所に行った。(3)1月20日、福岡地裁の進行協議で、絶対に和解しないと公言した。三学部長は、混乱を長引かせる要因を作り出したのは、むしろ長谷川氏の側にあるのではないかという疑問を呈している。

 6月10日の理事会のやり直しに関する笠・長谷川派の主張は、自分たちにとって優位に進めたいとの意図がうかがえる。長谷川氏は、6月10日の理事会に理事として参加していた上山大峻前学長を、すでに退職し学長の身分を喪失していることから、当然に理事の地位を失っていると主張。笠氏を含む12名の理事で理事会を開催するよう求めている。これは、上山前学長が参加すれば、反対派が数的優位に立つ可能性があるからだ。

 一方、反対派は1月17日、筑紫女学園の代表代行者選任の申し立てを福岡地裁に行っている。笠・長谷川派が代表代行者とする現事務局長を宛名にすると反対派の訴状が届かないからだという。これは、現事務局長が、無効とされた6月10日の新理事選任決議で選任されており、その正当性に裁判所が疑義を持っているからだと考えられる。これまでの経緯に詳しい卒業生の父兄は、長谷川氏の所感について、「あまりにも馬鹿げた責任論。学園の危機を招いたのは笠氏らの私物化違法経営であり、正常化を求める反対派理事が起こした訴訟が原因ではない」と、怒りを露わにした。

【山下 康太】

 

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