2024年04月19日( 金 )

原発がミサイル攻撃を受けたら?~玄海原発には使用済み核燃料900t

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玄海原発

 北朝鮮は何を考えているのか。何かいやなことがあると返事の代わりにミサイルを試射してくる。防衛白書によると北朝鮮には、トクサ(射程120kmと推定)、スカッド(射程1,000km未満と推定、スカッドERの場合は1,000km以上)、ノドン(射程1,300kmと推定)、テポドン1(射程1,500kmと推定)、ムスダン(射程2,500km~4,000kmと推定)、テポドン2(射程は2段式で6,000km、3段式で10,000km以上と推定)、KM08(大陸間弾道ミサイルと推定、詳細は不明)、潜水艦発射弾道ミサイルを保有しているとしている。6日、4発同時に発射された北朝鮮のミサイルはスカッドERと考えられており、能登半島の北200kmと日本の排他的経済水域内に着弾した。このスカッドERの射程で円を描くと、西日本地域はほとんどが含まれていることが分かる。九州もほとんどが射程圏内で、九州内にある玄海原発、川内原発も射程圏内に含まれている。ノドンの射程ならば日本本土ほぼ全域が射程圏内だ。ミサイルの飛距離もさることながら、核開発も進んでいる可能性があり、核弾頭を搭載可能なサイズにまで小型化する技術が進んでいることも想定されている。もし核弾頭を搭載したミサイルが都市圏を襲ったならば、その被害は尋常なものではないことは明らかだ。通常弾頭であっても、もし、原発にミサイルが撃ち込まれたら、やはり相当な被害がでることになるだろう。

 原発へのミサイル攻撃については2015年7月、山本太郎参議院議員が参院平和安全法特別委員会で質している。原発がミサイル攻撃を受けたらどの程度の被害がでるのか、との山本議員の問いに対し、原子力規制委員会の田中俊一委員長が「想定していない」と返答する場面が見られた。

 まず、弾道ミサイルとは弾道飛行(キャッチボールするように弧を描く飛行)するミサイルを指し、巡航ミサイル・トマホークのような精密なコントロールはできない。したがって、原発をピンポイントで狙うのは、おそらく技術的に不可能で、現実的には九州方面に向けた弾道ミサイルが原発に命中する、という可能性がわずかにある程度だと考えられる。わずかな確率ではあるが、原発が通常弾頭を搭載したミサイルの攻撃を受けた場合、どの程度の被害が出るのだろうか。国会での山本議員と田中委員長のやり取りの中で、田中委員長はミサイル攻撃を想定していないとはしながらも「原子炉格納容器の破損などで放出される放射性セシウムは福島の1,000分の1以下」となる対策を施しているとしているが、実際はどうなのだろうか。

 原子炉の建屋、原子炉圧力容器は非常に堅牢につくられており、致命的なダメージを与えるためには炸薬を搭載したミサイルのような爆発物よりも、貫通力の高い対戦車ロケットのようなものの方がより有効だと、専門家にうかがったことがある。しかしながら、原子炉以外の、たとえば冷却系の一部や制御系などがミサイル攻撃を受けた場合、福島第一原発の事故のようなメルトダウン、メルトスルーといった過酷事故が発生する可能性はある。また、原子炉自体ではなくても、原発に留め置かれている使用済み核燃料や放射性廃棄物がまき散らされる可能性はある。それでも福島第一原発事故の1,000分の1以下にとどまるのか、不安は尽きない。

 ちなみに広島に投下された原爆「リトルボーイ」に搭載されたウランは約50kgで、そのうちの1kgが核分裂したとされている。玄海原子力発電所には2~4号機に装荷できる核燃料は最大で約220トン。高い放射能を持つ使用済み核燃料は約900トン(2017年3月現在)貯蔵されている。それ以外にも低レベル・高レベルの放射性廃棄物が原発内には保存されている。

 これだけの放射性物質をため込んだ施設がミサイル攻撃を受けることを考えると背筋が寒くなる思いがする。平和が一番ではあるが、万が一、本当に万にひとつを考えて、放射性物質を扱う潜在的な危険性について議論が深まることを、3月11日を前に祈るばかりである。

【柳 茂嘉】

 

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