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2017年03月16日 07:01

名門はなぜ破綻に至ったのか(5)~鹿児島の通信工事、三州電通工業

 栄枯盛衰は世の常。経営者の資質が問われる破産事件が起きた。2016年7月、三州電通工業(株)(本社:鹿児島市谷山港、前田直人代表)が40年の歴史に幕を下ろした。こう表現すれば、聞こえはいいが、取引先を中心に関係者は一様に首をかしげている。「なぜ倒産しなければならなかったのか」「耐えられたはず」「裏切られた」。取引業者からは疑問や不満が漏れ聞こえてきた。同年8月に破産開始決定が降りたのだが、一連の破産事件はまだまだ終わりそうにない。

破産は決まっていた

 三州本社では、7月20日に取締役会で、破産申立を行うことが決定し、準備手続きに入っていた。そのような状況下で、A社は直人氏から、今考えれば信じられない知らせを受けた。

 7月22日に届いたメールである。「支払いは8月15日まで待ってほしい」との内容だった。そのメールを直人氏が送った時には、すでに破産準備に入っており、支払えないことは決定的だった。

 破綻前後の動きを、時系列でまとめると以下のようになる。

7月16日 直人氏が各支店に25日に本社に来るように伝達
7月20日 取締役会で破産申立が決定
7月22日 A社へ支払い日(8月15日)を通知
7月25日 事業停止
8月1日 破産手続き申請
8月5日 破産手続き開始決定

破綻事実よりも裏切りに怒り

 A社代表の心境を考えると、居た堪れない。三州存続のために、泣く泣く支店閉鎖を飲んだ。受け皿会社として、資金を書き集め、新会社を設立。その後、1カ月以上仕事をさせておきながら、支払わずに破産した三州。なによりも裏切られた気持ちが大きいのは、直人氏が自ら破産を決めていながら、「8月に支払う」と嘘を付いていたこと。「詐欺だ」と声を挙げるのも、当然だろう。債権者集会でA社代表は直人氏に対し、「どんな気持ちでこの(嘘)メールを書いたのか?」と詰め寄ったらしいが、直人氏は俯いたまま、明確な回答ができなかったそうだ。なお、A社同様に、破産申立決定後に三州からの工事を行った会社もあり、売掛金回収をめぐり、訴訟に発展している。

まだ残る疑問

 7月25日に全社員に対し、破産の旨を告げ、解雇した。全社員に対し、前日24日に2カ月分の給与が支給されていたことに、疑問を抱く関係者は多い。「それだけ現金があれば、資金は回るはずだ」。元従業員の話では、全社員へ2カ月分となれば、4,000万円ほどの現金が必要となる。通常通り、1カ月分払えば2,000万円。半分の2,000万円は残ることになる。「現金2,000万円あれば、会社は回せる」と複数の元従業員は語る。

苦労から逃げた?

 「結局、直人氏は廃業したかったのではないか」。そう語る関係者は多い。代表に就任して10年が過ぎた。苦労の連続だったに違いないが、それでも会社の代表として、社員の生活を守る義務は大きい。それを放棄した形で、名門企業がひとつ消えてしまった。あとに残るのは、複数の訴訟とやりきれない従業員の思いだけだ。直人氏が相談できるブレーンが一人でもいれば、状況は変わっていただろう。代表就任までに、もう少し長い助走を取っていれば、このような事態は避けられたのかもしれない。

 現在進行中の訴訟を終えねば、最終的な配当が確定せず、破産事件は終わらない。6月には3度目の債権者集会が開催されるが、事業規模から言って異例の長さである。すべてが終わりを迎えるまで、関係者の気持ちの整理は済まないだろう。そんな気持ちとは裏腹に、直人氏はあっさり再就職を決め、すでに新天地(大手企業)で勤務を開始しているということを最後に付け加えておく。

(了)
【東城 洋平】

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