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2017年04月17日 13:39

夏場でもホウレン草を安定供給へ。ビタミン・カラーが作る日本の農業の新しいカタチ

スーパー、外食関係者ら注目

ビタミンカラー七城ファーム

 熊本市西区に本社を置く(株)ビタミン・カラー(松崎光紀代表)は4月6日、熊本県七城町で施設の披露会を開いた。当日は朝から県の農業関係者、スーパーマーケット、外食産業の関係者らが視察に訪れた。同社が公開したのは、ビニールハウスを活用した「ほうれん草の周年栽培システム」。このシステムを用いることで、従来できなかった夏場の生産が可能となり、また、通常は年4回しか収穫できなかったホウレン草が年最高8回収穫できるという。

もとよりホウレン草は、栽培に経験や勘が必要と言われる野菜だ。地球温暖化により作物の収穫体系が変わりつつあり、悪天候などが加わることで、市場において葉物野菜の不足や、価格高騰など様々な問題が生じている。不安定な状況を改善し、安定供給に繋がるこの取り組みは業界関係者らの関心を集めている。

 葉物類は他に水菜、小松菜があるがこれらは料理用途が限られる。そのようななか同社は料理の幅が広がり、かつ栄養価の高いホウレン草の栽培に注目し、栽培を特化した。ビニールハウスはパナソニック製の「パッシブハウス型農業システム」を使用。自然の力を活かして栽培環境をコントロールするこのシステムは、一棟あたり700~800万円の費用がかかる。通常のハウスの4倍近い費用がかかるが、これらは官民ファンドによる出資で賄う。同社は昨年11月、(株)地域経済活性化支援機構のファンド子会社REVICキャピタル(株)とロングブラックパートナーズ(株)の共同で運営されている「九州広域復興支援ファンド」による支援を受けた。官民ファンドの心強い後ろ盾もあり、事業運営がなされている。

収穫量は約2倍。価格安定にも繋がる

 ホウレン草は通常8~25度の温度帯でないと栽培ができない。年に4回収穫できるが、天候によって生産量は変動しやすい。これに対し、パッシブハウス型農業システムは高い生産効率が期待できるという。「1棟あたりで400キロ、年に3.2トン収穫できます。収穫量も通常のハウス栽培の2倍も採れ、非常に栽培効率が高いのが特長です」と松崎社長は自信を持ってコメントする。九州では福岡県小郡市の永利農園、宮崎県都城市の(株)風土の農場でこのシステムが採用され、活用されている。

 「平成元年と比べ全国のホウレン草農家は約6割減りました。農家の高齢化もありますが、熟練された職人が不足しています。そこで安定栽培できる新しいアグリビジネスを提案する目的で現在、熊本県内の各農家の方々にご提案させていただいています」と松崎社長。昨年、天候不順により一時期、ホウレン草はスーパーの売場で一袋350円、400円などの高値となったのは記憶に新しい。ホウレン草を安定生産することができれば、価格帯も安定し、売る側のスーパー、買う側の消費者にとってメリットは大きい。また、このシステムを導入すれば農作業の省人化による作業負担の軽減に繋がるほか、計画栽培により今まで以上の収穫が見込める。耕作放棄地があればそこにビニールハウスを建てることができ、場合によっては他人に賃貸することも可能となる。ビタミン・カラーの取り組みは、日本の農業の諸問題や課題を解決してくれる可能性を秘めている。

ビニールハウスはパッシブハウス型農業システムを採用

ハウス内は太陽光、光、水がバランスよく自動制御されている

 同社はこのシステムを各農家の使っていない畑などに設置して貰い、そこで生産されたほうれん草を青果卸に売るという中間流通の役割を担う。生産には経験や熟練された技術などは必要なく、目視による管理がメインとなるほか、10棟管理すれば世帯収入は従来農家が得られるものよりも多くなる。「残念ながら高齢化に伴い、農業自体を辞めるという人も少なくはありません。収益も安定しないため、後継者もいない。このシステムは農地の有効活用を促し、農家の収益拡大と地域人材の就農機会の増加を目的としています。これからも地域に眠っている”資産と資源”を有効活用することで地域を活性化させ、発展させる一助となりたいですね」と松崎社長は語った。

 同社によると今後、県内の熊本市植木町に30棟、合志町に50棟を設置する予定。年内に100棟設置し、5年間で500棟の設置を目標としている。「農業の仕事を創出していきたい。農業には興味があるが、莫大な費用がかかるため断念している人もいます。そのような人たちをぜひ支援していきたい」。松崎社長らの取り組みが耕作放棄地の減少、後継者不足の解消などに繋がれば、新しい農業の在り方が見えてくる。震災から一年が経過した今、被災地・熊本でほうれん草で農業を活性化する試みに期待したい。

【矢野 寛之】

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