2024年03月29日( 金 )

創業から49年間黒字経営を達成、関家具(後)

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関家具グループ 関 文彦社長

 日本一の家具生産地・福岡県大川市に拠点を置き、家具卸売業を中心に小売・製造業を展開している関家具グループ。厳しい経済情勢が続く大川で、創業以来49年間赤字なしの経営を行う。同社を率いるのは、黒のスーツに赤のネクタイがトレードマークの創業者・関文彦社長。酒たばこはたしなまず、毎朝腕立て伏せ、スクワット、腹筋、逆立ち歩行のトレーニングを欠かさない強靭な身体と意思の持ち主。御年75歳の関社長に、会社を成長・発展させる秘訣を聞いた。

 ――事業を拡大していくうえで、失敗談などありませんか。

 関 もちろん失敗はあります。しかし、こちらは社員に任せているから文句は言わないし、やめろとも言いません。事業が軌道に乗らず社員から「閉めさせてください」と言われたときは、「失敗したのならば次は成功すればいい」と返しています。2013年9月、社員の提案で、東京の青山に一枚板を販売する「アトリエ木馬ギャラリー」を出店しました。青山は桁違いに家賃が高く3年間ぐらいは赤字でしたが、それを過ぎるとドル箱になってきました。赤字が出てもどこまで続けるか、失敗してもどのくらい許容するか、経営にはその判断力が不可欠です。お陰様で青山ギャラリーは認知度が上がり、世界中から富裕層が訪れるようになりました。昨年はイタリア人の方が、4,300万円のイチイの一枚板を購入されました。イチイは成長が遅く、建材や家具に使えるものが滅多に手に入らないため珍重されています。古代日本では高官の笏(しゃく)に用いられたという高貴な樹木です。こういった希少価値とストーリー性を付加した高額商品の一枚板を製造し、昨年からはアジアのマーケットで販売を始めました。今年は輸出に力を入れ、中東のドバイへも卸しています。

 ――4,300万円とは、それだけで家が建つ価格ですね。

 関 今後はさらに高額の8,800万円の一枚板を製造します。神代ケヤキです。紀元前466年、秋田と山形にまたがる鳥海山が噴火し地殻変動が起こりました。そのとき地中に埋まったケヤキが掘り出され、それを購入しました。3年かけて乾燥し商品化します。通常、無垢材の一枚板は40万~60万円の価格帯ですが、弊社では他社との競争がない1,000万円以上の高額商品を製造しています。

 ――御社は若手社員が多く、定着率も高いと聞きました。

 関 20年ぐらい前までは社員の募集に苦労し、高校や大学の説明会に行っても、なかなか学生に振り向いてもらえませんでした。しかし。近年は100名以上の新卒者が応募してくれます。面接は社員が担当し、私は介入しません。私が面接していたときは「できる人」を基準に選考していたため、社内がぎくしゃくしてしまうことがあったのです。しかし、社員は「一緒に働きたい人」を基準に選考しますから、社内環境が円滑になります。今年の新入社員は、大卒18名、高卒5名です。

 ――今後の展望についてお聞かせください。

 関 会社の長期目標に売上高1,800億円を掲げています。日本全国の家具に関する需要、住空間だけでなくオフィスやホテル、病院などのコーディネートやレイアウト、内装工事までを含めてですが、全体の5%を取れば可能な数字です。そして、私自身、少なくとも125歳までは社長をやる気でいます。仕事が楽しくて楽しくて仕方ないのです。中でも一番楽しいことは、社員たちが「自分のやりたい仕事」を成功させたときです。経営の心得13か条にある「お客様満足、社員満足、地域社会貢献を旨とする、三方よしの精神」で、今後も会社を発展させていきます。

(了)
【取材:村重 珠実】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:関 文彦
所在地:福岡県大川市幡保201-1
設 立:1982年11月
資本金:1億4,000万円
売上高:(16/5連結)147億9,600万円

<PROFILE>

関 文彦(せき ふみひこ)

1942年4月生まれ。福岡大学商学部卒。68年関家具を創業、82年に法人化。趣味は、歌舞伎、世界の辺境旅行、野球、ゴルフ、読書など。

 

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