2024年04月27日( 土 )

創業から49年間黒字経営を達成、関家具(前)

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関家具グループ 関 文彦社長

 日本一の家具生産地・福岡県大川市に拠点を置き、家具卸売業を中心に小売・製造業を展開している関家具グループ。厳しい経済情勢が続く大川で、創業以来49年間赤字なしの経営を行う。同社を率いるのは、黒のスーツに赤のネクタイがトレードマークの創業者・関文彦社長。酒たばこはたしなまず、毎朝腕立て伏せ、スクワット、腹筋、逆立ち歩行のトレーニングを欠かさない強靭な身体と意思の持ち主。御年75歳の関社長に、会社を成長・発展させる秘訣を聞いた。

 ――関社長のコーディネートについてお聞かせください。

  私の好きな色は赤・黒・白の3色です。この3色は、家具の色の定番です。営業で大切なことは、まずは顔を覚えてもらうことで、誰にでも覚えてもらえる格好と思ってこの服装にしました。以前は、ネクタイの色を考えるのに時間を取られていましたが、今は考える必要はありません。結婚式とお葬式も、ネクタイの色を変えるだけで済みます(笑)。

関家具グループ 関 文彦 社長

 ――関家具の創業についてお聞かせください。

  父が木工業者だったので、小さいころから家具に親しんできました。高校卒業後に久留米市にある親戚の家具屋に入社して、仕入れから販売、経理などさまざまな業務を担当し、7年間の修業を積みました。並行して夜は福岡大学商学部の二部に通い、簿記や会計を学びました。大学を卒業すると、トラック1台を買って故郷の大川で独立。家具の卸業を始めました。戦後で物がない時代ですから、家具は飛ぶように売れていきました。売れ筋の家具を調べて、自分で改良・企画・デザインしたものを製造業者へ発注。仕入れた家具をトラックに積んで、家具店へ販売しました。当時は手形取引が主流で、父もそうでしたが製造業者は売掛金の回収に何ヵ月もかかって困っていました。ときには、回収できないこともありました。それで仕入れを手形ではなく現金払いにしたところ、製造業者は喜んで売値を安くしてくれました。卸すときも他社より安くできたので販売先が徐々に増え、商売が軌道に乗りました。

 ――不況が続く大川の家具業界のなかで、御社は創業以来、黒字経営を続けています。その秘訣を教えてください。

  創業の1日目から行ってきたことは「日次決算」です。毎日粗利を計算することで目標に対する数値が明確化し、経営状況を把握できます。例えば、家具業界では平日は赤字なのですが、土日・祝日に大きく黒字となります。平日の赤字をどうやって黒字化するか。雨の日の平日、お店にお客さんがまったく来なかったら、自分が外に出て行けばいいなど、赤字を補てんする対策を考えることができます。それから、時代のニーズに合わせた変化も必要ですね。町おこしを例にとると、「よそ者・若者・ばか者」といって、変化を起こせるのはこういう人たちです。その土地に生まれ育った人の多くは、前例を踏襲して変えようとしない。発展するためには、時代の流れを読み、流行や消費者のニーズへ敏感に対処することが必要です。私は、つねに幹部たちに世界情勢を分析・予測させています。私が分析するよりも、若い人たちの方が的確です。それらをすべて聞きとって、経営の判断に役立てています。

 ――御社の事業は、社員の提案から始まると聞きました。

  「関家具経営の心得13か条」というものがあります。そこには『楽しくなければ仕事じゃない、やりたい事を任す、失敗しても文句は言わぬ、責任は全て社長が取るから思いっ切りやってください』『社員の皆さんは社長の先生、社員からの情報及び意見及び提案は会社繁栄の源』とあります。例えば、昨年末にオープンした「シークレットストック」という、新しいビジネスモデルは社員の発案です。「シークレットストック」という名前を聞いて、どう思われますか。

 ――掘り出し物がありそう、というイメージですね。

  そうです。一般的なカテゴリーでいうとアウトレットですが、「何か掘り出しモノがありそう」というワクワク感がショップのコンセプト。デッドストックやキズ有商品などを揃え、蚤の市のような感覚で商品探しを楽しむ、新しいタイプのショップです。大牟田市のイオンモール内にオープンし、3日間で当初の1ヵ月分の売上目標額を達成するという成果を収めました。このように社員の提案から、新しい事業を立ち上げています。社員は私の先生で、社員との会話はアイデアの源泉。若い人の考えを知ることが、現代のニーズを掴むコツです。

(つづく)

【取材:村重 珠実】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:関 文彦
所在地:福岡県大川市幡保201-1
設 立:1982年11月
資本金:1億4,000万円
売上高:(16/5連結)147億9,600万円

<PROFILE>

関 文彦(せき ふみひこ)

1942年4月生まれ。福岡大学商学部卒。68年関家具を創業、82年に法人化。趣味は、歌舞伎、世界の辺境旅行、野球、ゴルフ、読書など。

 

(後)

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