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2017年05月19日 09:03

世界で加熱する新技術開発競争(2)

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 ところで数年前のことだが、資源エネルギー外交の一環として中東諸国を訪問した。中でもサウジアラビアでの体験は強烈であった。同国の外務省で日本人として初の講演を行った後、砂漠の民ベドウィンの酋長のもとを訪ねた時のことだ。

 それまで何か月も雨が降らず、ラクダの乳で喉を潤していたとの話を聞いていた時、突然、あたりが薄暗くなり、無数のトンボが出現。その直後、雨が降り出したのである。ベドウィンたちからは「恵みの雨をもたらしてくれた日本人」ということで、大歓迎されることになった。乾燥地での生活において「水の一滴は血の一滴より貴重」と言う。あらためて水の重要性を噛みしめたものである。

 言うまでもなく、地球温暖化の影響もあり、世界的な水不足が深刻な問題をもたらし始めている。水源を巡る紛争や対立も激化しつつある。2025年までに、世界人口の3分の2は水不足の生活を余儀なくされるようになるという。トランプ政権の空爆で国際的な関心が高まるシリア情勢であるが、長引く紛争も、元をたどれば水問題が引き金であった。

 しかし、「ピンチはチャンス」との発想でこの水不足を新たなビジネスと受け止め、技術の力で乗り越えようとする動きも各地で見られるようになってきた。国連や世界銀行でも水問題の深刻さを訴えると同時に対策に向けての資金提供も進めている。もちろん、民間サイドにおける研究開発や商品化の動きも活発化している。

 例えば、既に2008年の時点で、オランダで開かれた科学技術サミットにおいてオランダ人の発明家ピーター・ホッフ氏は「ウォーター・ボックス」と銘打った新商品を展示し、栄えあるベーター・ドラゴン賞を獲得している。欧州を代表する電機機器メーカーであるフィリップスのCEOジェラルド・プレイステーリー氏から「最も将来が期待される革命的な発明」と認定する賞状と賞金を受け取ったものだ。

 その後、この新商品は「グロアシス」という名称で知られるようになった。このアクアプロ社製商品は砂漠地帯において木を育てる上で欠かせない技術になるとの期待が高まっている。すでにサハラ砂漠での実験を通じて、その性能が立証されつつあるからだ。砂地や岩場という劣悪な環境のもとでも、この装置を使えば大気中から必要な水分を吸収し貯蔵することができ、そのボックスに植えられた木が大きく育つようになる。

 ウォーター・ボックス自体はプラスチック製の長方形の箱で、真中に穴が開けられている。その穴に木を植えるのだが、箱の中には土が詰められている。この発明品の特徴は夜間、水蒸気を吸収し箱の中に貯めておくことができること。もちろん、雨が降れば、その水を貯めておき、必要な水分を埋め込まれた木に与えることができる。しかも、強い太陽光線や風、あるいは雑草、害虫などから樹木の根を完全に保護してくれる。1年間そうしたウォーター・ボックスの中で育てられた苗木は、その後ウォーター・ボックスを取り除かれた後も自力で逞しく成長できるようになる。

 サハラ砂漠での実験では、2つのグループに分かれて、この技術の有効性が試された。1つのグループはこのウォーター・ボックスを利用し、もう1つのグループは自然のままに放置され、毎日人が水を与えるという条件に置かれた。その結果、3カ月ほど経った時点で2つのグループの成育状況を比べたところ、ウォーター・ボックスに植えられた木は90%以上が順調に育ち、緑の葉を増やしていた。極めて強い太陽の下に置かれていたにも関わらず、すくすくと育っていたのである。

 もう1つのグループは毎日水を与えたにも拘わらず、残念ながら90%以上が枯れ果ててしまった。発明者のホッフ氏に言わせると「このウォーター・ボックスを使えば、そして植えるべき樹木の種類を選べば、地球上の砂漠を緑地に変え農地に生まれ変わらせることも可能になるだろう」とのこと。中東やアフリカ、インドなど厳しい自然環境の土地ではこのウォーター・ボックスが強い味方になりそうだ。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

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