2024年04月19日( 金 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~セ・リーグ各チームの状況(前)

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 昨年の交流戦で素晴らしい成績を残して、ファンの方々を大喜びさせた広島東洋カープ。その勢いで、ペナントレースを勝ち取ったような雰囲気があるが、今年もそんなチームが出てくるのだろうか。

 セ・リーグでは、ここまで開幕時から不安定な戦いを見せていた阪神タイガースが、ここにきて一転。投打ともに上げ潮の様子を見せてきて、5月6日の広島戦を甲子園球場で12対9という考えられない点差を逆転して、首位に立った。
 この試合、初回は広島が2点先行し、2回にも2点の追加点。完全に投手の良い広島の逃げ切り体制ができ、広島ペースの出足で試合は始まった。4回に広島が2点を追加した時点で、テレビの前の阪神ファンは諦め、広島ファンは勝利を確認したことだろう。
 続く5回に、またもや広島が3点追加で9対0の試合展開。私も長く選手生活を送ったが、9対0からの逆転は経験したことがない。悔しい話で、たしか1985年だったと思うが、同じ甲子園で7対0から、同じく阪神戦で逆転をされた経験がある。だが、9対0の試合での逆転の経験はないだけに、この日は広島の勝利は確信していた。
 しかし、野球の怖さを見せつけられた阪神の逆襲が、ここから始まった。

 5回裏、鳥谷選手の四球から始まって1点を返した阪神。これが阪神打線に火をつけたということになる。6回に、7点を奪う攻撃を見せるのである。これで9対8の試合になり、完全に阪神に追い上げムードいっぱいになった。まして地元である。広島でもそうだが、こうなるとファンが黙っていない。ものすごい追い上げムードで7回に3点、8回に1点。
 結果、終わってみれば12対9で、阪神の大逆転勝利である。この勢いで首位に立つと、次の日も6対0で広島を押し切り、首位を守りきって甲子園を終了。見事だった。

 次の日の広島の打線に少し元気がなかったことは事実だが、ショックだったのだろう。だが、良い経験をしたと思う。勝負事は、何が起きるかわからないということである。昨年は、このようなことをしながら勝ち上がってきたチームが、今年は反対にやられているということだ。

 阪神の問題は、ここからどのように投手陣を回すか。まだまだ藤浪投手は不安定。メッセンジャーにも少し疲れが出てきているように見える。能見がどこまで頑張るか。秋山はたしかに良くなったが、完封する投手ではない。岩貞、福永の頑張りがどこまで続くか。あとは若い打線が、投手をどこまで投手を助けていけるか。チームのムードをつくるのは打線次第のような感じがするが、パ・リーグ相手の戦い、どんな作戦で行くか。この交流戦は見どころだろう。

 阪神は、勢いがつくと強いチームだ。1985年も、ものすごい勢いで当時セ・リーグのチームが勝てなかった西武を破り、日本一になっている。それが阪神というチームだ。


 広島は、2位にピッタリとつけている。昨年のチャンピオンの意地か。たしかに昨年の勢いはないが、ただ勝ち方は少し覚えたようだ。今期は多くのケガ人を抱えて、ここまで1位、2位のポジションを走っているというところを見ると、やはり昨年の優勝経験は大きい経験だったのだろう。ただし、昨年皆が頑張ったせいだろうか、今年はケガ人が少し多く出ている。オフのいろいろなイベントが響いているのか、多くの緊張に包まれた試合を乗り越えたせいか、疲れが残っているのだろう。

 最近では、WBCから頑張ってきた菊池選手が、続けて試合を休んでしまった。タフな選手と見ていたのだが、やはり人間であり、機械ではなかったということだ。疲れがきたのだろう。その影響で、チームは連敗した。菊池選手のせいとは言いたくはないが、たしかにチームのリズムは壊れた。そのせいで打線が乗れなくなり、リズムが悪くなった。監督コーチは、良い経験をしたことだろう。菊池選手も疲れるのだ。後半戦の良い勉強になった。これからも、こうしたことが少し見られるかもしれない。この経験を、今回の勉強を忘れないようにしたいと思います。

 このようなときに西川選手、安倍選手、野間選手、天谷選手が同じことをしようとしないで、70%でいいのである。チームの役に立つことを考えればいいと思う。同じことをしようとすると力んでしまうため、うまくいかない。

 投手陣もそうだ。考え方のなかで、野村投手と同じことができる投手は、若手ではまだいない。岡田投手もまだここまで行っていない。当然、九里投手もだ。大瀬良投手は、勝ち星を記録した喜びを忘れずに頑張ろう。投手にとって勝ち星は一番のエネルギーだから、福井投手も頑張ってほしいと思う。いずれにしても巨人が出てくるため、巨人戦に強い福井投手は絶対に必要だ。

 そうこうしている間に、ジョンソン投手、野村投手が帰って来る。中崎投手が帰ってきて、中継ぎと抑えに少しゆとりができた。交流戦を、昨年と同じようにいくとは思わず、自分たちの野球を今年も出す努力をしてほしいものだ。今年は、相手チームも良い投手をぶつけてくることだろう。エルドレッド選手を疲れさせないよう、気をつけてほしいもの。というのも、疲れが出ると大振りになって打てない選手だから、気をつけよう。

(つづく)

2017年5月27日
衣笠 祥雄

 

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