2024年04月19日( 金 )

日欧EPAは日本の畜産業を破滅に追い込む

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 NetIB-Newsでは、政治経済学者の植草一秀氏のブログ記事から一部を抜粋して紹介する。今回は、安倍首相が取り交わした日欧EPAの問題点を指摘した、7月10日付の記事を紹介する。


安倍内閣の支持率下落に歯止めがかからない。世紀の悪法「共謀罪」創設を国会審議を打ち切って強行した。横暴極まる国会運営は、森友・加計・山口の「アベ友三兄弟」疑惑を国会で追及されるのを防ぐための姑息なもので、国会を無理やり閉幕して7月2日の東京都議選に向かった。

選挙戦最終日には満を持して東京秋葉原の街頭演説を強行したが、そこに待ち受けていたのは、「安倍政治を許さない!」主権者の市民であった。「安倍辞めろ」をコールする主権者に対して、安倍首相は「あんな人たちに負けるわけにはいかない」と指さしたが、7月2日の東京都議選で安倍自民は歴史的な大敗を喫した。

加計学園に対する便宜供与、利益供与は安倍首相と下村博文元文部科学相が主導したものと疑われているが、自民党東京都連会長の下村博文氏が加計学園から200万円の闇献金を受領していたとの疑惑が発覚したことも、都議選に大きな影響を与えたと思われる。

安倍・下村自民が東京都議選で獲得した議席はわずかに23。議席定数127の5分の1にも満たないものになった。安倍政権を支持する主権者は激減し、明確に安倍政権を支持しない主権者が急増している。安倍首相は安倍首相に対する疑惑を追及する国会審議を自分の不在中にセットした。

「逃げ得」を狙っているのだろうが、主権者国民の不信は増すばかりである。不信を解く方法はただひとつ。主権者に真摯に向き合うことである。

安倍首相は国会審議を自分自身の外遊中にセットして、外交で得点を稼ごうとしたが、実力のない首相が大きな得点を挙げられるはずがない。ドイツハンブルグで開かれたG20会合では、対北朝鮮対応でイニシアティブを示したかったが、中国、ロシアが背を向けて、何ひとつ成果を挙げられなかった。

さらに、安倍首相は今回G20前に日欧EPAの大枠合意成立を強行させたが、合意成立をもたらしたのは日本の全面譲歩だった。TPP協議でさえ認めなかったチーズの輸入について、EU側の主張をほぼ全面的に認めたのである。

つまり、外交で得点を挙げたように見せかけるために、日本の利益を売り渡した、日本の主権者の利益を放り出したのである。まさに「売国の極み」である。肉の輸入についてもTPP並みの譲歩を演じた。米国産や豪州産と異なり、欧州産の食肉はブランド価値が極めて高い。関税率の急激な引き下げは、間違いなく日本の畜産農家を破滅に追い込むことになる。
これから成長が期待される国内市場向けに生産体制を強化しようとしている日本の酪農産業にとって、チーズ輸入の全面開放は致命的な打撃を与えるはずである。

自分の利益のためには主権者の利益を踏みにじることに何の躊躇もない。これが安倍政治の本性である。

7月10日、衆議院第二議員会館および首相官邸前で集会ならびに街頭行動が実施される。(編集部注:本記事掲載日は7月10日)

TPP11、日欧EPAを考える院内集会
日時:7月10日(月)16:00~18:00
場所:衆議院第2議員会館第1会議室

内容:
1.政府担当者(内閣府・外務省)による交渉内容の説明と質疑
2.主催団体からの問題提起と意見交換
「TPPプラスを許さない!官邸前行動」
日時:7月10日(月)18:15~19:15
場所:首相官邸前

情報開示がまったくなされてこなかった日欧EPAが大枠合意してしまった。この問題について、政府職員が説明をする。どれだけの説明をするかは未知数だが、市民の集会に政府関係者が出席して説明することは当然のことで、市民は多くの疑問を投げかけるべきだ。

TPPについて、安倍首相は国会答弁で最終合意文書の見直し、修正は絶対にしないと明言してきた。米国抜きでTPPを発効するにはTPP最終合意文書の見直し、修正が必要である。国会答弁に反する安倍政権の行動に主権者は異を唱えなければならない。

主権者が行動し、声を挙げることで政治は変わる。主権者の積極的な行動参加が強く求められている。

※続きは7月10日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第1789号「輸入価格下落より賃金下落が大きい日欧EPA」で。


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・植草一秀の『知られざる真実』

 

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