2024年04月19日( 金 )

久留米市・欠陥マンション裁判、福岡高裁が原告の訴えを棄却(前)

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 構造計算の偽装や施工の不具合により耐震強度を35%しか有していないことが判明し、建築確認において偽装を見逃した久留米市に対し、「マンション居住者および近隣の市民の安全確保のため行政庁として除却命令を発令すること」を求め提訴した訴訟は、本年4月13日福岡地裁にて1審判決が言い渡されたが、原告住民は、「判決は法令の解釈を真逆に適用していた」として控訴していた。きょう(12月20日)、福岡高裁は、原告の訴えを棄却する判決を言い渡した。

 建築確認審査において、設計の偽装を見逃した久留米市(所管の行政庁でもある)に対して、建物の建替え命令の義務付けを求めた裁判において、1審・2審を通じて、建築構造面の技術支援を続けてきた(協)建築構造調査機構の理事長である仲盛昭二氏に、この裁判の判決の意義と今後について取材した。

 ――1審に続き2審でも原告の訴えが棄却されました。この判決について、どう理解されますか?

 仲盛 久留米市に是正命令の義務付けを求めた裁判は、もう1つの裁判、鹿島建設の施工ミスと設計事務所の設計偽装に対し損害賠償を求めた訴訟と並行して進められてきました。
 久留米市に是正命令を求めた裁判は、設計の偽装に、ずさんな建築確認審査がかさなり、結果として耐震強度が不足した設計となった経緯を明らかにし、さらに、重大な施工ミスの数々により建物の耐力が著しく低いものとなった現実を明らかにする狙いがあったのです。いわば、損害賠償裁判の補助的な役割であり、弁護士の考えも、久留米市への建替え命令義務付け訴訟での勝訴は、初めから考えていないと聞いています。

 ――久留米市を訴えた裁判は損害賠償訴訟の補助的な役割だったということですが、1審判決後、原告が控訴をされた理由は何ですか?

 仲盛 原告(控訴人)である管理組合および区分所有者が控訴した最大の理由は、「1審判決が法令解釈を誤った判断を示したこと」です。具体的にいえば、非埋込柱脚における「鉄量」と「保有水平耐力計算のDs値」という異なる要素を混同し非常に偏った判断を示しています。

 ――1審判決が法令の解釈を誤ったことについて、どういう理由を考えていますか。

 仲盛 1審判決が構造計算における2つの異なる要素を混同した理由を推測するならば、(1)裁判官が、建築構造に関する問題点を理解できないまま、判決を書いた。(2)行政裁判において、行政を敗訴させてはいけないとの意思が働いた。この2つの理由が考えられますが、(1)「建築構造の問題点の理解不足」については、原告を技術支援している私たちが、1審を通じて何度も技術意見書を提出し、説明を尽くしてきました。1審判決が混同した2つの要素についても、根拠の法令規定を示して丁寧に説明を繰り返しましたので、意図的でなければ、この2つの要素を混同することは考えられません。

(つづく)

 
(中)

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