2024年03月29日( 金 )

医学部入試の「抜け道」、いまや王道?(前)

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 大学入試も大詰め。2月25日からは全国の国公立大学175校で2次試験が実施される予定だ。景気が上向いたこともあって、就職に強いとされる法学部などを中心にした文系人気が高く「文高理低」傾向だが、理系でも医学部だけは相変わらずの高倍率を維持している。文理あわせても別格の安定度といえるだろう。
 西日本は医学部受験熱が盛んな地域だが、九州地方の医学部人気は過熱気味だ。難易度最高峰の九州大学医学部は倍率約4倍で偏差値66~70と、全国でも激戦大学の1つ。一方、九州の国公立で最も入りやすいとされる宮崎大学医学部でも約7倍、偏差値63以上の狭き門だ(東京大学理科1類と2類の偏差値は約65)。

 ところで、現在の医学部入試には「地域枠」という特別入学枠が設けられている。都市圏に集中する医師の偏在を解消するために2008年に本格導入された制度だ。地域枠は募集の段階で一定の絞りをかける。たとえば鹿児島大学ならば、受験資格を「県内の高校出身者」に限定し、センター試験と面接、推薦状の審査などで合否を判定する。難解な記述式の2次試験を受けずに、基礎的内容が中心となるマークシート方式のセンター試験だけで受験できるのだから、受験生にとってはありがたい制度だろう。都会の秀才たちと張り合う必要もなくなる。ちなみに高知大学など、在籍高校を県内に限定しない地域枠も少なくない。

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 香川大学では、県が指定する医療機関で9年間医師業務に就くことを地域枠受験の条件としている。しかし、鹿児島大学ではとくに勤務年限を指定しておらず、県が支給する修学資金貸与を受ける意思があることを受験条件に記すのみ。実はカラクリがある。修学資金貸与の条件に、県立医療機関での9年間のへき地勤務が条件として明記されているのだ。

 

 この地域枠制度の定員は、本格導入から10年を経て大幅に増えており、今や全国の医学部を置く大学のうち9割が地域枠を設置している(私立大学も含む)。全定員に占める割合も約17%になった。弘前大学にいたっては、半分以上が地域枠の学生だ。すでに地域枠は、知る人ぞ知る医学部合格の「抜け道」などではなく、地域医療を守る人材を育てる「王道」として確立されたと言っていい。

(つづく)

 
(後)

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