2024年04月25日( 木 )

斜陽アパレル業界で急成長 新事業開発に営業利益の3割投入(前)

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(株)ストライプインターナショナル

 服が売れない時代に創業20年あまりで連結売上高1,000億円を突破した(株)ストライプインターナショナル(旧・(株)クロスカンパニー)。老舗・名門が店舗削減やブランド絞込みなど守りの戦いを余儀なくされるなか、同社はM&AやITを駆使して業容を拡大し続けている。また、事業領域もライフスタイルやITへと手を広げている。グローバル戦略と多角化で1兆円企業を目指す同社の戦略とは。

倒産ピンチで業態変更

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 (株)ストライプインターナショナルの躍進の原動力となったのが主力ブランド「アースミュージック&エコロジー」の成功だ。女優・宮崎あおいを起用したテレビCMが知られる。1994年の創業時の業態はセレクトショップだった。代表が欧米で買い付けた商品を4坪の店で販売するかたちで初年度から黒字を確保した。

 ところが4年目にそのスタイルでの限界に達し倒産の危機に直面する。その時参考にしたのがアメリカ発のグローバル製造販売(SPA)企業、GAPだ。同社もSPAに業態を変更。その年に市場に投入したのが「アースミュージック&エコロジー」だ。

 セレクトショップ時代の最新の高価格帯商品でなくナチュラルさや着心地の良さを打ち出した。価格もリーズナブル。10代から30代をターゲットに1号店を岡山駅そばのファッションビルに出店した。人気を博すと駅ビルや郊外型ショッピングセンターなどへの展開を加速させていく。04年からは香港のFCを皮切りに海外進出も開始。100店舗になるまで約7年を要したが、実現すると2年で200店舗に広げた。宮崎あおいのテレビCM起用は2010年から。

 消費者は「売価はしまむらより少し高いか同等。しまむらのデザインが良くなってきたとはいえ、宮崎あおいが身に着けるのと同じものが安く買えるのは魅力」と評価する。知名度が格段に向上し、翌年、ブランドの売上高は40%伸びた。11年から中国出店を開始。国内先発組が軒並み失敗するなか店舗数を順調に増やし、台湾でも展開する。

 国内の同じ商業施設に出店する同業者が「とてつもない販売力」と舌を巻く営業力が最大の特徴だ。販売手法も『黒子のバスケ』など、人気漫画やアニメとのコラボ企画などを積極的に取り入れ、ターゲット層の注意を引き付けている。

海外戦略の要は中国 反日デモ下でも店舗網拡大

 好調な主力ブランドを武器に同社が力を入れてきたのが海外戦略、とりわけ中国だ。
 中国は世界中のトップブランドが集い、インバウンド客に人気を博している大手「オンワード」や「ワールド」でも苦戦した難しい市場だ。同社も進出した翌年、12年に反日デモを経験する。ユニクロが「尖閣は中国領土」という貼り紙できわどく難を逃れた一方で、同社の「アースミュージック&エコロジー」はデモ渦中の北京の店舗で中国最高の売上を叩き出す。

 この年は重慶、蘇州、西安に出店し日本企業の危機を後目に業容拡大に成功した。石川代表自身が中国に住み込み、逐次意思決定していた成果だ。石川氏は中国進出企業の失敗要因を意思決定の遅さにあると喝破、上海にマンションを購入して直接交渉にあたっていた。緊迫した状況でも現地担当者と顔を突き合わせることで、拡大を選択し具体的な手を打つことができたのである。何より自社のブランドが現地で高く支持されていることを肌で感じ取っていた。ブランド戦略も現地化せず、日本のものをそのまま持ち込んだ。日本独自の「かわいい」が評価されていたからだ。今後も中国では新業態を含めて強気の展開を進めていくことになる。

(つづく)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:石川 康晴
所在地:岡山市北区幸町2-8(本社)
    東京都中央区銀座4-12-15(本部)
設 立:1995年2月
資本金:1億円
売上高:(17/1連結)約1,200億円

 
(中)

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