2024年03月29日( 金 )

斜陽アパレル業界で急成長 新事業開発に営業利益の3割投入(中)

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(株)ストライプインターナショナル

 服が売れない時代に創業20年あまりで連結売上高1,000億円を突破した(株)ストライプインターナショナル(旧・(株)クロスカンパニー)。老舗・名門が店舗削減やブランド絞込みなど守りの戦いを余儀なくされるなか、同社はM&AやITを駆使して業容を拡大し続けている。また、事業領域もライフスタイルやITへと手を広げている。グローバル戦略と多角化で1兆円企業を目指す同社の戦略とは。

営業利益の3割を新事業開発資金へ

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 売上高1兆円を目指すうえで13年からグループ経営方式をとっている。ストライプ社とターゲット層が近く「Sm2(サマンサモスモス)」など有力ブランドを展開する(株)キャンを買収した。キャンおよび子会社3社で190億円の売上のかさ上げをM&Aで実現した。14年にグローバル展開用の新ブランド「KOE(コエ)」を投入する。主力の「アースミュージック&エコロジー」が400億円近くを売り上げるなか、目標とする売上高1兆円の半分に当たる5,000億円を、新たに立ち上げた「KOE」で稼ぎ出そうという算段だ。アジアに強い「アースミュージック&エコロジー」だが、色のバリエーションやサイズの種類が限られている。

 ブランドを世界戦略化するにはファッションの本場欧米を含めた全人種を対象としなければならない。そこで綿密なマーケティングを実施。打ち出したのは、先進的だが着心地が良く値段もリーズナブルというコンセプト。注目されるのは「フェア」の概念のブランド化だ。農場、紡績工場、縫製工場、物流センター、店舗。これら原料生産からエンドユーザーまでの5工程のなかで人権、労働、環境を管理して品質とフェアなものづくりで差別化しようというものだ。近年あらゆる製品にフェアトレードの概念が広がってきたが、既存の世界的ブランドでもブランド化までは至っていない。

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 同社はZARAやH&Mと戦うブランドとして「KOE」を選んだ。勝算は五分五分と見積もるが、同事業に10年で50億円を投じる計画だ。

 思い切った投資の意思決定ができるのは「攻め」と「守り」のルールを明確化しているから。「攻め」は主力事業で得た営業利益の3割を新事業開発に投じるというもの。浮沈が激しいアパレル業界で、主力が活況なうちに新事業の種をたくさん撒いておくという考え方だ。新ブランドや海外に積極的に投資するのは、斜陽といわれるアパレル業界に身を置いてきた危機感からだ。

 2015年に事業領域をアパレルからライフスタイルとテクノロジーにまで拡大した。取扱商品はハンドクリームやスイーツなどに拡大している。車検サービスにヒントを得たクリーニングサービスも行っている。

 「守り」のルールは進出時に投下する資金の限度を設定するというもの。売上が好調でも、投下した資金が当初の予定金額に達すればたとえ黒字でも「撤退」か「退店」を行う。「撤退」は全店閉鎖して廃業、「退店」は黒字店のみ残してそのほかは閉鎖して事業継続するというもの。

 主力事業の営業利益の3割は投資金額としては大きすぎるように映るが、同社の拡大は守りながら攻めるという独自のバランスのなかで成立している。

月額5,800円でブランド衣類借り放題サービス

 事業領域の「ライフスタイル」は衣食住などイメージしやすいが、「テクノロジー」とは具体的に何だろうか。石川氏はIT(情報技術)と定義している。わかりやすい取り組みが15年に導入した「メチャカリ」。定額で人気ブランドの衣類を借りられるサービスだ。

 月額5,800円、7,800円。9,800円の3つのコースがあり、3点から7点を借りることができる(返却手数料380円)。買い取る際は5%から15%の割引。同時に手元におけるのは3点のみだが、返却すれば新たに別の衣類も借りられる。いわば「1万円でコーディネートし放題」となるわけだ。対象10代から40代の30ブランド。2カ月継続レンタルして気に入ったものがあればそのまま貰えるというサービス。メンズ2ブランド提供しており品ぞろえを充実させている。

 衣類の配送は発注後3日前後。平均単価4,000円の商品を5点買えば2万円だが、メチャカリなら送料込み8,000円強で済む破格のサービス。消費者にとってはいいことずくめだが、同社に取っては既存客が同サービスに流れることで減収のリスクが発生する構造になる。

 しかし、石川氏によるとメチャカリ利用者の65%が新規客で、これまでの主力販売層でなかった50代の会員も獲得しているため、そのリスクを上回るリターンも見込める。高年齢層に会員が拡大している理由は、このシステムのリーズナブルさに気づいた親世代が子ども用に入会しているからだ。35%の既存客も完全な乗り換えではなく、店舗での購入も継続している。新規客開拓と囲い込みツールとして有効に機能し始めているのだ。昨年は子ども服のネット通販企(株)スマートビーを買収。この分野に大量の資金を投入しており、斜陽のアパレルだけでなく成長産業のITで成長モデルを描いている。

(つづく)
【鹿島 譲二】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:石川 康晴
所在地:岡山市北区幸町2-8(本社)
    東京都中央区銀座4-12-15(本部)
設 立:1995年2月
資本金:1億円
売上高:(17/1連結)約1,200億円

 
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