2024年04月16日( 火 )

良い家具づくりへの飽くなき追求~新体制で世界へさらなる飛躍を(後)

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(株)リッツウェル 代表取締役社長 宮本 晋作 氏

 福岡本社のほか、東京・大阪に支店を構え、国内3拠点体勢を敷く家具メーカーの(株)リッツウェル。同社の独自ブランド「Ritzwell」の家具は、世界最大規模の家具見本市「ミラノサローネ」への出展を機に、今や国内のみならず海外からも注目を集めている。今年1月1日付で同社の代表取締役社長に就任した宮本晋作氏に話を聞いた。

(聞き手:建設事業部・坂田憲治、代源太朗)

家具に真剣に向き合い“心に響く”ものを

 ――宮本社長は、学卒後に飛騨やイタリアで修業を積まれ、企画室長のころより御社の家具デザインを一手に引き受けてこられました。社長就任後、そうしたデザイン業務についてはいかがですか。

 宮本晋作代表(以下、宮本) 今でも弊社の家具デザインは、主に私のほうで行っています。デザインと経営とを両立していくことは大変ではありますが、その一方で、弊社の場合は、この2つは直結するものだと考えています。デザインというものは、いわゆる数字のようなわかりやすいかたちで目に見えるものではありませんが、ものづくりにとってはブランドそのものを左右するほど重要なものです。1つひとつの商品づくりに、あせることなくじっくりと取り組み、今まで以上に真剣に家具に向き合っていかねばならないという思いです。

 私たちが手がける家具は、いわゆる“モダン”家具です。モダン家具の製作では、可能な限り不要な要素を削ぎ落としていくという考え方が必要になるのですが、それだけでは家具が無機質で冷たいものに感じられてしまいます。弊社では“温もり”が感じられる有機的なモダンをテーマに家具製作に取り組んでいます。家具は実際に日々の生活のなかで使用するものですから、“機能性”の高さが求められます。さらにインテリアとしての“審美性”も兼ね備えていなければなりません。そして、住空間との“調和性”の高さも必要です。この3つをそろえることができたとき、初めて家具を提供する側も購入した側も、心地良さを得ることができるのだと思います。

 ――御社の家具は、その3つがそろっているからこそ、国内のみならず世界からも高い評価を得ているのですね。

 宮本 さまざまな評価をいただいておりますが、私たちとしては、自分たちが「良い」と思えるものをつくり続けていくのみです。先ほど、「機能性と審美性、そして調和性の高さを両立できたとき、心地良さを得ることができる」という話をいたしましたが、私はさらにその先を目指していきたいと考えています。何と表現していいのか、今はまだ具体的な言葉にするのは難しいのですが、家具を購入された方の“心に響く”ものを提供できるようになりたいと思っています。

 この目標が達成できれば、家具にさらなる付加価値を与えられますし、それを生み出す社員たちも、働く意義をより感じられるようになると思います。さらに社員が楽しみながら仕事ができるようになれば、きっと顧客の喜びにもつながるはずです。商品の種類を増やすのではなく、1つの商品を深みのあるものに変えていく。この理想の追求こそが、結果として、弊社の業績をさらに向上させていくことにつながるのではないかと思っています。

 とはいえ、求めていくのは規模の拡大よりも、むしろ事業の深化です。広げていくよりも深めていくことで、リッツウェルの思想や理念を具現化し、より良い家具づくりを追求していきます。

世界を見据え、これからも挑み続ける

 ――御社は今年も、「ミラノサローネ国際家具見本市」に単独で出展されるとお聞きしております。

(株)リッツウェル 宮本 晋作 代表

 宮本 ミラノサローネには2008年に初出展し、今回の出展で10回目、単独出展としては6回目になります。
 家具の本場は欧米です。なかでもイタリアは本場として知名度も高く、大きな市場も形成されています。そんなイタリアで開催される世界最大規模の家具の見本市「ミラノサローネ」で、弊社の「Ritzwell」ブランドの家具がどこまで通用するのかという会長の強い思いから始まったこの挑戦も、回を重ねるごとに現地での反応が良くなり、着実に実績が上がるようになってきました。
 とくに意識しているわけではありませんが、出展した際に来られたお客さまからいただいた声のなかには、「日本の香りがする」といったものもありました。家具自体は、とくに和を意識したわけではないモダン家具を製作していますが、我々日本人の手でつくることによって、意図していないところで和の要素が感じられる部分があるのかもしれません。とはいえ、私たちとしては世界に向けて媚びることなく、自分たちが良いと思える家具づくりを続けていきます。

 当初は、会長の「家具の本場ミラノに行きたい」「世界に通用するものをつくりたい」という思いから始まったミラノサローネへの出展でしたが、挑戦していくことそのものが、会社としての夢やビジョンにつながっていきます。これからも、ミラノサローネへの出展を通じて、家具の本場であるイタリアの市場を開拓すると同時に、理想を実現し、「Ritzwell」を世界で知られる家具ブランドにしていく――。日本家具メーカーのパイオニアとなれるよう、絶えず挑戦を続けていきたいと思います。

(了)
【文・構成:代 源太朗】

<プロフィール>
宮本 晋作(みやもと・しんさく)
1978年1月生まれ。九州産業大学建築学科を卒業後、家具の本場である飛騨とイタリアで修行を積み、2005年に(株)リッツウェルに入社。常務、専務を経て、18年1月に代表取締役社長に就任した。

 
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