2024年03月29日( 金 )

神社本庁の闇に連なる「レスリング協会」「日本会議」「安倍政権」(後)

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首相につながる、レスリング、日本会議人脈

渋谷区代々木の、神社本庁

 (前)で指摘した疑惑を紐解く前に、神社本庁の運営体制について説明しよう。

 「神社界には争いごとを好まない、おとなしい人が多い。そして、かつての神社本庁は権威と常識をもった人たちによって運営されていた。それが、田中総長の長期政権が続くようになって変わってきたように感じます」(同前)

 田中総長とは、京都石清水八幡宮の宮司でもある田中恆清氏のこと。神社本庁のトップである総裁には10年に就いた。総裁の任期は3年だが、「2期6年」が通例。田中総長も16年6月で退任するだろうと周囲は見ていた。
 ところが2期6年の任期満了間際になって、田中氏はその後も理事にとどまる意向を持っていることが漏れ伝わってくる。
 「17人いる理事の中から、総長、副総長、常務理事が選任されます。株式会社に例えると、総長が社長、理事は取締役です。社長を辞めた人がヒラの取締役に戻ることはないように、『理事に残る』ということは『総長を続ける』という意思表明と受け止められました」(同前)

 結局、田中体制は異例の3期目に突入することになった。この田中総長の盟友で、「田中3選」を演出したと目されているのが、神社本庁の元幹部職員で、現在は神社本庁の関連団体「神道政治連盟」(神政連)の会長に収まっている打田文博氏だ。
 「活動資金は全国の神職・神社からの会費・協賛金を合わせて2億円程度。集票力にしても10万票もないはず」(同前)と、カネと票とではさほどのパワーを保持していないかに見える神政連だが、会長の打田氏は政界に隠然たる影響力を持っている。

 「政治家が新しく運動を立ち上げる時、神政連=神社本庁が賛同しているとなると他の有力団体も安心して賛同してくれやすくなる。だから神政連は政界で重宝がられ、打田さんの存在感も大きくなっていった」(別の神社本庁関係者)

 それだけではない。神政連の理念に賛同する300人ほどの国会議員からなる超党派議連「神道政治連盟国会議員懇談会」、この巨大議連の会長が安倍首相本人なのだ。さらにいえば、田中・打田の両氏は、安倍首相を強力にバックアップする保守系団体「日本会議」でも、それぞれ副会長、代表委員という要職にある。それほど神社本庁と神政連、いや田中・打田の両氏は、安倍首相と近い関係にあるのだ。

日大レスリング部人脈

 話を神社本庁の職員宿舎売却の件に戻そう。
 職員宿舎を即日転売したディンプル社は、過去にも神社本庁の不動産売買に関わっている。神社本庁の関係者によると、それは同社の高橋恒雄社長と打田氏を結ぶ強いコネクションがあってのことだという。
 高橋氏は、日本メディアミックスという会社も経営しているのだが、こちらも神社本庁とビジネス上のかかわりを持っている。同社は神社本庁と関係が深く、田中が理事長を務める(一社)「日本文化振興財団」が発行する機関誌「皇室」の販売を行っているのだ。

 その日本メディアミックスの創業者で現在も取締役になっているのが、日本レスリング協会会長の福田富昭氏。福田氏と高橋氏は、日本大学レスリング部の先輩・後輩の間柄で、福田氏自身も神政連の打田氏と親交が深い。さらに福田・打田の両氏も、前述の日本文化振興財団の理事になっている。

 このように、神社本庁による不可解な宿舎売却は、彼らを取り巻く政界・スポーツ界人脈を改めて浮き彫りにすることとなった。
 告発に関わった元職員が神社本庁を訴えた裁判の過程で、どのような事実が明らかにされるのか。転がり方次第によっては、田中・打田体制が大きなダメージを被ることになる。そうなれば、彼らが強く支持してきた安倍政権にも動揺が走るのは必至である。

(了)

 
(前)

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