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政治・社会

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2018年04月16日 07:00

安倍政権崩壊の予兆となる偽証=「記憶にありません」(後)

青沼隆郎の法律講座 第4回

加計学園問題、柳瀬首相秘書官無記憶証言事件

 愛媛県職員らに対し、(学)加計学園の獣医学部新設計画について「首相案件」と伝えていたとされる当時の首相秘書官・柳瀬唯夫氏(現・経済産業審議官)。問題の発言を記録していた愛媛県職員について、柳瀬氏は「記憶の限り会っていない」とコメントし、一躍時の人となった。

 野党は柳瀬氏の証人喚問を求めているが、すでに根本的な過ちを犯している。野党は何を立証したいのか。柳瀬氏が愛媛県職員と面談し、「首相案件」などの発言をしたという事実の立証なら、すでに愛媛県知事の会見により、文書の存在と内容の確認が終わっている。柳瀬氏の証人喚問にこだわる必要はまったくない。

 問題は、ここでも奇妙な法律論が横行している点にある。愛媛県職員が作成した文書は口頭報告のための備忘録であり、正式な公文書ではないため、“県庁には現存しない”とされる。

 しかしながら、文書の証明力において、正式公文書と職員の備忘録とでは本質的に差異はない。正式公文書とされる文書にも多数の虚偽文書・改竄文書が存在することは財務省による決済文書改ざん事件が示したばかりだ。一方、私人の簡単なメモであっても決定的な証明力が認められたのが、戦後史に残る有名な冤罪事件「松川事件」。「諏訪メモ」と呼ばれた日記が無罪の決め手となった。

 公務員が通常業務のなかで作成した文書には、極めて高い証明力と信頼性が認められる。正式公文書であろうと、業務用の備忘録であろうと、その法的性質は無関係である。

 柳瀬氏は面談した相手が愛媛県職員で、複数の当該公務員が当然、しかるべき面談記録文書を作成し残すこと(少なくとも出張旅費清算書など)を予見していた。それが世間に発覚した際に備えて、「記憶にありません」を連発しているのである。そんな役人を追及して何になるのだろうか。

 さて、無記憶証言が簡単にその信用性が否定される実例として、柳瀬無記憶証言事件は意味がある。柳瀬氏が無記憶証言をした場合、面談した愛媛県職員複数名を証人喚問すれば、実に明解に柳瀬無記憶証言の虚偽性が証明されるからである。

 柳瀬氏はあくまで「記憶にありません」と言い続けるであろう。しかも、その理由は首相秘書官として多数の人と面談していたからという。これは愛媛県職員との面談が非日常性のない事実との主張である。しかし、それは見事に愛媛県職員の証言によって否定された。

 首相秘書官が地方公務員と面談すること自体が非日常的事実なのである。柳瀬氏は、多数の地方公務員と公務上の理由で面談していた日常があったことを立証する義務があり、その立証なくしては、無記憶証言は虚偽と認定されざるを得ない。

 柳瀬氏にとって、業務日誌、日報、面会記録など、多くの証明資料が存在するはずであるが、それを自己の証言の正当性のために提出しないことも、証言の虚偽性を強く推認させる状況証拠となっている。証言(供述証拠)にはその真実性を担保するため、客観的な物証が必要であることは証拠法の基本だ。

 補強証拠がなく、証言だけであると極めて不利な扱いを受ける。それは「信用できる」か「信用できない」かの判断だけで処理されるからである。従来の国会議員が供述証拠の取扱い方を知らないため、不利な扱いを受けなかっただけである。もう、無記憶証言が安全な時代は終わったというべきである。

(了)
【青沼 隆郎】

<プロフィール>
青沼 隆郎(あおぬま・たかお)
福岡県大牟田市出身。東京大学法学士。長年、医療機関で法務責任者を務め、数多くの医療訴訟を経験。医療関連の法務業務を受託する小六研究所の代表を務める。

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