2024年04月19日( 金 )

ふくおかFGと十八銀行の経営統合~公取委の不承認を検証する(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

明暗を分けた経営統合

 新潟県に本店を置く第四銀行と北越銀行は2017年6月に公正取引委員会に経営統合の審査を求める届け出書を申請したが、貸出金シェアが寡占的だったため審査が長引き、ふくおかFGと十八銀行の二の舞になるのではと心配されたが、12月に入り認められた。半年延長となったものの、今年10月1日(予定)に第四北越FGを設立し、2行はその傘下に入ることになった。その明暗を分けたのは競争行である大光銀行の貸出金シェアが20%近くあったことが大きな要因といえるのではないだろうか。

2.不承認となっているふくおかFGと十八銀行の経営統合
 公正取引委員会が申請から2年近く経った今も、ふくおかFGと十八銀行の経営統合を不承認としているのは、双方に譲れない大きな壁が横たわっているように見える。その要因を探っていくことにしたい。
◆ふくおかFGと十八銀行は経営統合が基本合意したと2016年2月に発表。当初は3月中の申請を予定していたが、届け出前相談の段階で想定以上に時間がかかったため、6月8日、公正取引委員会に届け出書を提出。
 公正取引委員会は届け出前相談を受けると、独占禁止法に基づき審査する行動を即座に開始。5月に長崎県内の企業約3,000社を対象に調査を実施。結果は「借りる先がほかになくなる」との回答が多かった。
◆それを受けて公正取引委員会は、『統合により長崎県内の貸出シェアの約7割を超える寡占行が生まれることで、貸出先の選択肢がなくなる可能性がある』と問題視。寡占の弊害懸念を指摘したことから審査が難航したため、ふくおかFGと十八銀行は2017年1月20日、経営統合を半年延期すると発表。
・公取委は長崎県内の取引先企業に対し再調査を実施。その結果、「競争が制限され貸出金利引き上げなど融資先が不利益を被る恐れが強い」との多数の意見を受けて、再度『現状では統合を認可しない』方針を決めたといわれる。それを受けてふくおかFGと十八銀行は昨年7月25日、寡占を懸念する公取委の審査が長期化しているため、無期限での統合延期を発表している。

公正取引委員会が不承認としている要因について

【表3】と【表4】を見ていただきたい。長崎県地銀の預貸金シェア表と収益力シェア表である。

これらの表から見えるもの

◆2017年3月期の「十八銀行+親和銀行」貸出金シェアは92.7%。12月期は93%。一方、競争行である長崎銀行の貸出金シェアはそれぞれ7.3%と7%と二ケタ台に届かない数字となっている。また収益力シェア表を見ても長崎銀行のシェアは6.7%~3.3%となっており、この寡占的な計数を承認すれば、公正取引委員会自体の存在意義が問われることになろう。

※クリックで拡大

経営統合承認に向けた最近の動き

 ふくおかFGと十八銀行は今月7日、経営統合の実現に向けた今後の取り組みを発表した。
 要約すると、長崎県を基盤とするふくおかFG傘下の親和銀行と十八銀行が経営統合することが、長崎県経済を金融面でサポートしていくことにつながる最善の選択だとし、経営統合によるシナジー効果によって生み出される500名の人員は、取引先との関係構築のために重点的に投下していくとしている。また、重複店舗の統廃合による効率化をはかり、離島を含めた長崎県全域の店舗網を維持し、顧客の利便性をこれまで以上に高めていくとしている。
 これから他行への債権譲渡を含め具体的に詰めていくことになるが、はたして公正取引委員会が承認できる案が提示できるかどうかにかかっている。もしこの経営統合が失敗に終わるようなことになれば、経営陣は大きな責任を負うことになる。いずれにせよ、結果は今月中に出ることになりそうだ。

(了)
【(株)データ・マックス顧問 浜崎裕治】

 
(中)

関連記事