2024年04月20日( 土 )

なにが問題なのか 改めて「漫画村」騒動を整理する(前)

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 福岡県警はインターネット上の海賊版サイト「漫画村」の運営者らに対し、著作権法違反の疑いで捜査を始めた。福岡県警をはじめとした複数の県警による合同捜査だという。

 ここ数カ月話題に上がることが多い「漫画村」。そもそもなにが問題とされているのか。ネット関係に疎い方からはちんぷんかんぷんという声も聞かれ、NetIB-News編集部のベテラン記者からは「そもそも最近マンガ読まないし、何が問題なのかちっともわからん」という声も上がっている。まだまだ鎮火までは時間がかかるこの問題、まずは現時点での論点整理をしてみよう。

 まずは、「漫画村とはなにか」というところから見ていこう。漫画村は、書店やコンビニで売られているコミックスや週刊漫画誌のページをスキャンした画像を、権利を持つ出版社や漫画家に無断で収集して掲載し、無料で閲覧できるようにしたサイト。つまり、本屋さんで売っている漫画雑誌や漫画本の内容を、タダで読めてしまうサイトだ。小中学生から大人まで広く人気を博し、17年12月の段階で月間1億アクセスを突破したという集計もある。漫画村のインターネット広告による売上は、17年11月の段階で月間6,000万円を超えていたという推計も出ている。
 漫画読者が無料を歓迎するのはしかたがないことかもしれないが、雑誌や単行本を売って収入を得ている出版社や漫画家側としては重大な販売機会損失であり、死活問題である。

 ネット上で漫画村の問題が指摘されるようになったのは、18年初頭から。同年2月には、(公社)日本漫画家協会(ちばてつや理事長)が「海賊版サイトについての見解」を発表した。この声明文のなかで、「作り手と、作品を利用する皆さまが、きちんとした『輪』のなかでつながっていることが大事です」としているように、漫画家と読者は出版流通の輪のなかでつながっている。本来は漫画家→出版社→書店→読者という連環のなかで、読者が雑誌や単行本を買った利益が流通にかかわる書店と出版社を潤し、漫画を生み出している漫画家の収入になっていかなければいけない。

 しかし、読者が漫画村を介して漫画をタダで読むと、この循環が発生しない。何のリスクもとらない海賊版サイト管理者が、インターネット広告による収入を独占するかたちになってしまうのだ。
 「残念ながら最近、私たちつくり手がその「輪」の外に追いやられてしまうことが増えています。その代わりに、まったく創作の努力に加わっていない海賊版サイトなどが、利益をむさぼっている現実があります」という日本漫画家協会の見解からは、この問題の重大さがみてとれる。それでなくても近年漫画を含めた本や雑誌の売上は下がり続け、漫画家の収入もまた上がらないという構造不況の状態になっているのだ。

 漫画村などの海賊版サイトの蔓延を、日本漫画家協会や出版社が見過ごすことができないと判断したのには、長く続く出版不況も背景として見逃すことはできない。「このままの状態が続けば、日本のいろいろな文化が体力を削られてしまい、ついには滅びてしまうことでしょう」という日本漫画家協会の叫びは、日本の漫画文化が大きな曲がり角に来ていることも示唆している。

(つづく)
【深水 央】

 

(中)

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