2024年03月29日( 金 )

長野県の男性が新型「ブルセラ菌」に感染 感染源・経路は不明

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 2017年5月、長野県在住の64歳の男性が発熱を訴えて診察を受け、急性腎障害による尿毒症の診断を受けて入院した。その後の検査の結果、男性は都道府県知事への届け出が義務付けられている感染症「ブルセラ症」に感染していたことがわかった。国立感染症研究所が調べたところ、男性が感染した菌はこれまでに確認されていない、まったく新しいものであることがわかった。また、男性はブルセラ症の主な感染経路である海外渡航経験や野生動物との密接な接触はなく、感染源や感染経路がわかっていない。

 ブルセラ症は、人間と動物のあいだで感染する人獣感染症。世界では毎年50万人程度が発症し、徐々に増加している。主な分布域は中国、インド、西アジア、中東、地中海地域、アフリカとラテンアメリカなど。
 感染経路は、菌を持っている家畜の乳や、チーズなどの乳製品を摂取した場合がほとんど。感染した家畜の肉を食べる、噛まれる、死骸を処理するなどの経路で感染する場合もある。日本で発症する人は非常に少なく、年間1~2人程度。
 国内で飼育されている家畜は清浄状態にあるため、牛乳やチーズから感染する可能性はない。一方、日本でペットとして飼育されている犬の3~5%ほどが感染していると見られており、飼い主やブリーダーが感染したケースもある。
 ブルセラ症に感染すると、1~3週間の潜伏期間を置いてインフルエンザに近い発熱、全身の痛み、だるさなどの症状が出る。午後から夕方にかけて発熱し、朝には熱が下がるというサイクルが数週間から長い場合は1年にわたって繰り返される。長野県の男性は一般的なブルセラ症の症状に加えて急性腎障害を発症したが、男性はもともと2型糖尿病を患っており、ブルセラ症の感染と関係があるかはわかっていない。

 国立感染症研究所の今岡浩一・獣医科学部第一室長はデータ・マックスの取材に応え、「確認された新型菌は、今後新菌種として登録していく。今回の感染は非常に特殊な事例であり、一般の皆さまが日常生活を送るうえで心配するようなものではありません」と話している。

【深水 央】

 

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