2024年03月29日( 金 )

企業の成長と従業員の幸福を追求する仕組みで時代を切り拓く(後)

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(株) 冨治商会

 ここ数年は、新築関係の着工も堅調に推移している。今後は市場が拡大しているリフォームやリノベーションの需要、たとえば、マンションの大規模改修や配管関係の掘り起こしにも注力し、さらなる飛躍を目指す。

改善提案が風通しの良い組織をつくる

 企業成長の源となるのは、人材である。人口減少が叫ばれるなか、人材確保の成否は企業の命運を左右するといっても過言ではない。同時に、従業員が能力を発揮できる環境を整えることも最優先課題である。企業のレベルアップや成長は、改善の積み重ねだともいえるが、同社では、従業員から改善案が上がってくる仕組みを構築している。1人につき半期に1つ以上の改善案を提案することになっているそうだが、従業員141人(2017年9月30日現在)が1年間に少なくとも2つずつ提案すると280件以上の改善案が寄せられることになる。上がってきた提案は、その1つひとつを役員が目を通す。採用されれば、改善を提案した本人は喜び、モチベーションも上がるだろう。

 しかし、この制度の特筆すべき点は、すべての提案に役員が目を通し、それに対する評価をつけることだ。これらの情報は、全従業員がサーバー上で共有することができる。従業員にとっては自己向上のための教科書にもなる。また、これらの情報を積み上げることで経営の知恵にもなる。さらに、改善提案制度は人事評価とも連動している。そうした評価が昇給などにどう結びついているのかなどの仕組みも公開しており、風通しの良さがうかがえる。

 福利厚生にも力を入れている。中村氏が社長に就任してから1週間の強制休暇制度などを導入した。給与水準も引き上げながら、毎週水曜日はノー残業デーにするなど、残業をなくすことにも積極的に取り組んでいる。福岡県の子育て応援宣言に登録、有給休暇や産休、育休といった制度を全従業員が活用しやすい環境の整備にも努めている。

 中村社長の「オンとオフの切り替えができるような風土をつくり上げていくことが、社内の活性化にもつながる。我々の仕事はお客さまに豊かな暮らしを営んでいただくこと。そのためには、弊社の従業員が仕事を通して成長するとともに、いろいろな意味で豊かさを実感できる環境整備が不可欠」という強い思いの表れである。

 従業員を大切にする経営陣の姿勢は、会社全体に企業風土として根づいているようだ。家庭の事情などで、いったん退職した女性が復帰したり、一度転職した男性が後に、「もう一度冨治商会で働きたい」と再入社したりするケースもあるという。

 風通しの良い社風は、会社と従業員、従業員同士のつながりを強め、時代を生き抜く力を発揮する。「事業計画の予算を上回る利益を上げることができれば、その分は従業員に還元すると社内で掲げてきたが、ここ数年は決算賞与を支給することができるようになった」と中村社長はたしかな手ごたえを感じている。

 人を育て、企業を動かす従業員の力を引き出す仕組みをつくる冨治商会の推進力は、ますます高まることだろう。

(了)

<COMPANY INFORMATION>
代 表:中村 克久
所在地:福岡市中央区赤坂1-2-7
設 立:1951年11月
資本金:9,200万円
TEL:092-712-0113
URL:http://www.fff-fuji.co.jp

<プロフィール>
中村 克久(なかむら・かつひさ)
 1966年福岡市生まれ。法政大学法学部出身。東京での商社勤務を経て96年に(株)冨治商会に入社。2003年11月社長に就任。趣味は映画鑑賞とゴルフ。「多くの人と接し、もっと自分を高めていきたい」と話す。

 
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