2024年04月26日( 金 )

【事件】堺医療グループ・ゴールデンコンビ決裂の真相(3)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

 昨年5月、福岡の医療関係者を驚かせる、ある事件が起きた。福岡市南区の医療法人、堺整形外科医院の元理事長で医師の堺研二氏が名誉棄損容疑で逮捕されたのだ。知人女性を中傷する文書を女性の関係者に送信した疑いだった。

 堺氏は医療界でやり手の経営者として知られ、メディアへの出演などで知名度の高い有名人だった。責任ある立場の人間が、なぜ犯罪行為に手を染めたのか。背景には、仲の良い兄弟が巻き込まれた、複雑な人間模様があった。

人事制度に違和感

 まずコンサル導入で、実行されたのは整骨院の正社員をパート化するというもの。当然反対する社員もいたが、推進した。実行前にも利益は出ていたが、整骨院での診療報酬請求が厳しくなるという危機感、将来に対する不安があったのだろう。たしかに戦略的には間違いではないが、腕利きの職人からすると不満は溜まっていたはずだ。コスト削減の効果は表れ始めた。

 すると、当然整形外科でも採用してみては?という流れになる。人事評価に自信のなかった研二氏はコンサルの導入を決めた。いいところは認めつつも、どうしても理解できない部分があった。コンサルが利益追求型であったため、研二氏はそれが理解できないことでコンサルを遠ざけ始めたのだ。コンサルが言い分を主張するのはいいが、正孝氏や幹部らがそれに完全に同調していることに違和感を覚えた。

 2013年ごろ、コンサルの人事制度に違和感があると切り出した研二氏。正社員をパートに切り替えて、コスト削減を計画するコンサルに対し、研二氏は医療は技術、技術継承が必要であるのに社員をパート化するということに違和感を覚えていた。さらに、Aら幹部は医療とは関係ない「にんにく注射」の導入を提案。これに対し、研二氏は猛反発した。

Aにまつわる新事実判明

 このような流れの中、研二氏は人事制度の改訂を行うことを決めた。パートを正社員に戻すというものだ。当時、正社員が40~50人でパートが130人もいた。実際、受付に20数人登録していたのは全員パートだった。実態を初めて知ったとき、研二氏は衝撃を受けたという。いい意味での「徒弟制度」がどんどん崩されていくのを、研二氏は見過ごすわけにはいかなかった。研二氏は当時をこう振り返る。「決裂の理由はそれまでの方向性の違いが積もり積もっていたため。ある会議でコンサルから医師として、吐き気を覚えるほどの発言を聞いた。その日のうちに、整形外科はコンサルから降りることを決めた」

 結局、コンサルの導入により、最高のパートナーである兄・正孝氏との方向性の違いが明らかになった。「なぜこんなに食い違ってしまったのか」――コンサルを引き連れて、兄との間に溝をつくったのは、「A」。そう思い始めた研二氏はAを退陣させる行動に出た。Aには過去、交通違反にかかわる犯罪歴があった。研二氏はAからその一端は知らされていたが、真相を知らされていなかったのだ。

 A本人からの報告とは大きく異なる重大な事実が発覚した。Aは意図的に隠していたのか、それとも説明不足だったのかはわからないが、研二氏から見れば納得がいかなかった。研二氏は「そんな人間が事業の中枢にいるのはおかしい。いったん退くべきだ」という旨の通知を再々送った。ついにAは退職し、独立した。

(つづく)
【東城 洋平】

 
(2)
(4)

関連キーワード

関連記事