2024年04月20日( 土 )

虻蜂取らずの非戦略的外交では朝鮮半島情勢の激変を乗り切れない(3)

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自民党 元副総裁 山崎 拓 氏

「の」入れれば済む

 ――安倍総理を信じるしか能力がない国会議員が増えているということですね。

 山崎 憲法でも、戦力不保持と交戦権放棄を記した二項を残し、三項をつくって、そこに「自衛隊」を明記するという案がすばらしいと自民党のほとんどの議員が思っています。それをやってくれるのは安倍総理しかいないと。

 ――戦力という言葉との整合性について自民党の議員はわからないということですか。

 山崎 わからないでしょうね。私は、二項を残して「前項の目的を達するため」という芦田条項を「前項の目的を達するための」に変えればすっきりすると言っています。前項(一項)は侵略戦争を放棄しているわけだから、そのための戦力をもたないというのが二項になり、侵略戦争ではない自衛戦争のための戦力はもてるという解釈になります。

 ――非常にわかりやすいですね。「の」を入れれば良いと。

 山崎 そうして自衛権を認めれば良いのです。わざわざ「自衛隊」と書くと弊害が多い。憲法に、自衛隊とか組織名はありません。警察もなければ、消防も書いていません。全部、法律でやるようになっています。だから「自衛隊法」があるのです。

 ――国民にとって個別的自衛権と集団的自衛権の違いはわかりにくい。

 山崎 集団的自衛権とは、日本と同盟関係にある国が攻撃を受けた時に、一緒に現地に行って守るというもので、アメリカが日本を守るのは、アメリカの集団的自衛権の行使です。日本はアメリカに対して集団的自衛権を行使する際、それがアメリカの侵略戦争であれば憲法違反になります。無条件で守るためには憲法改正が必要になります。

 9.11の時にアメリカは侵略されたとして、首謀者のビン・ラディンをやっつけるために、日本は同盟国だから加勢しろと言ってきました。だけど、日本は、そこまではできない。ただ、話としてはありました。同盟国のアメリカが侵略されたわけだから、集団的自衛権を行使して、日本もビン・ラディンの追跡に参加しようという話が水面下でありました。それができないから、インド洋に船を浮かべて油の補給活動を実施したわけです。アメリカだけでなく、イギリスやフランス、ロシアの艦船にも補給しました。間接的ですが集団的自衛権の行使です。

 ――歴代総理に比べても、安倍総理は、外国へ行く度にカネだけばらまいて帰ってくる。しかし、カネのばらまきや利権に取り込むということは中国のほうが長けており、次から次に切り崩されるということが続いています。アメリカが、イスラエル大使館を壊したことで騒ぎになりましたが、おそらく、そこも追随するのでしょう。

 山崎 行きあたりばったりの外交になっているということと“個人的な関係”ですね。要するに「ケミストリー(相性)が合う」ということを、すごく売り物にして、「トランプとも合う」「プーチンとも合う」と。ただし、「習近平と合う」とは1回も言わない。習近平のほうも言わない。トランプやプーチンは「愛いやつだ」という姿勢で来るけれども、言葉のうえでは「信頼」という言葉を使うこともありますが、国益を曲げてでも安倍総理の頼みごとを優先することはありません。ケミストリーだけではダメですよ。

 ――そのことに日本の政治家が気づかなくなっている。

 山崎 それが何よりの証拠に、アメリカは、自分のほうでつくったTPPを脱退しました。日本が脱落しないでくれと懇願してもやめちゃった。鉄鋼、アルミも高関税にした。日本の言い分に対して耳を傾けない。アメリカは日本を利用はするけれども、個人の関係のために日本と協調することはないということです。

(つづく)
【文・構成:山下 康太】

 
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