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流通

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2018年06月14日 07:04

巨大組織ダイエーを継承したイオン、長年の夢『グローバル10』は実現するか?(中)

拡大のメリットとデメリット

 M&Aは規模拡大にともなうメリットとデメリットがある。メリットは規模拡大にともなう調達価格の引き下げと市場シェアの拡大だ。さらに自社とは違う価値観をもった人材の獲得も大きな利点になる。さらに相手の店舗と資産も。しかし、これらのメリットは時としてデメリットに変わる。

 まず、市場の拡大だが、統合先と同じエリアで競合しない場合は問題ないが、もし、競合していたら店舗の統廃合という問題が出る。ところが、これはなかなか簡単にはいかない。整理、統合には人と資産の問題が発生するからだ。

 人材もしかりである。出自が異なるということは価値観も違う場合が多い。文化風土の違いは考え方に影響する。加えて優秀な人間は概して個性が強い。トップによほど大きな度量がない限り、組織のなかには譜代と外様、好き嫌いと嫉妬という少なくない垣根ができる。この垣根こそ改革を阻む強固な壁になる。

 製造業からサービス業まで広範囲のM&Aを実行したダイエーにはこの問題が付きまとった。さらにオーナー家の意向と現場幹部の感情的なもつれも加わり、最後には巨大組織が崩壊した。

 当然、イオンにも同じ構造的問題が存在する。しかし、全国各地で大小さまざまな日本型大型店が競い合っていた当時と違い、今は小売業上位10社の売上高23兆円(セブンイレブンの加盟店売上を除く)の60%超をセブン&アイとイオンという上位2社で占めている。この競合環境の違いは実は重要な意味をもつ。日本型大型店はこの2社を残して、消えてしまったということである。つまり現在は競合がない状況なのである。あとはそのセグメントの改善を図っていけばいいということである。しかしながらM&Aの負の残滓はまだ残っている。それは旧型店舗の問題だ。高度成長期の日本型大型店は百貨店志向だった。

 当初、低層小型店舗でスタートした彼らはその後の成長にともない、都市部に多層階の店をつくり始めた。中には駐車場なしの多層階店まであった。いわゆる駅前一等地の時代である。見学してきたアメリカの郊外型大駐車場店舗とは異質の店づくりに精出したのだ。それは1980年代半ばまで続いた。
都市型店舗は物流にも販売管理にも小さくないコストを生む。競合に負けた場合は、大きな赤字を生むということである。70年後半から80年代、イオンの都市部店舗はダイエーとの競合に負けた。結果として郊外型SCに転じ、このことが後に逆転のポイントになるのだが、その結果、イオンは皮肉にも欲しくもない都市部の旧型店舗を抱え込むことになるのである。

深慮遠謀

 ダイエーだけでなく、吸収したニチイや、そのほかの企業も少なくない都市部高層型店舗をもっていた。イオンは提携先や合併先の統合にじっくり時間をかける企業でもある。同社は過去、旧社名とサインをそのままで継続営業するのが普通だった。それが「ジャスコ」という名前が表す連邦経営である。しかし、近年は社名、店名を一気にイオンに統一している。その後にやるのは当然、資産の有効活用だ。

 都市部旧型店はその採算性から見ても、とても有効活用とはいえない。小売としてみれば完全にお役御免の施設なのである。当然、店舗以外への活用を検討しなければならない。

 しかし、店としては魅力を失っているものの、都市部既存店は角度を変えてみれば貴重な再生物件でもある。今や都会中心部には、まとまった土地が少ない。それに対し、高齢化の進行と若者の車離れでマンションや医療施設などへのニーズは高い。そんな環境を考えると店舗閉鎖にともなう跡地の転用はイオンにとって不採算店の閉鎖と資産の有効活用という一石二鳥になる。

 イオンの特徴はその勇気である。商品、店舗運営はどちらかというと褒められたものではないが、新型店への挑戦や海外出店などには特筆すべきものがある。たとえば、東南アジアへの出店はそれに当たる。

 カンボジアやベトナムなど国民の平均所得から見て収支が容易でない地域にも店舗規模こそ小さいものの、早々と出店している。カンボジアの1人あたりのGDPは1,500ドルに満たない程度である。ベトナムにしても3,000ドルに届いていない。少なくとも3,000ドルが必要という中で、あえてその地へ出店するのは「将来を見越しての井戸掘り」にほかならない。

 そんなイオンは2007年、アンコールワットに近い場所に、イオンと前国王シアヌークの名を冠した博物館を建設している。マックスバリュはそれから10年を経ての出店である。(ちなみにここ10年でカンボジアのGDPは2倍に成長している)

 小さな川がいずれ大河へ。まずあえて小型店。その後に大型店。歩みこそ速くはないがイオンはその道をしっかりたどっているといえる。

(つづく)

<プロフィール>
神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年、宮崎県生まれ。74年寿屋入社、えじまや社長、ハロー専務などを経て、2003年ハローデイに入社。取締役、常務を経て、09年に同社を退社。10年1月に(株)ハイマートの顧問に就任し、同5月に代表取締役社長に就任。流通コンサルタント業「スーパーマーケットプランニング未来」の代表を経て、現在は流通アナリスト。

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