新たなステージ迎えた再エネの未来(5)
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2030年、一般社団法人太陽光発電協会(JPEA)が掲げる、太陽光発電だけで100GW超、5,700万世帯分の電気がまかなえる時代は来るのか。原発39基分の電気が太陽光だけで生み出せるようになれば、日本のエネルギー自給率も大幅に上がり、海外に依存しない国産電力ができるかもしれない。しかし、太陽光のみならず再生可能エネルギーの普及が進む一方で、ハードルはまだまだある。本シリーズでは新たなステージを迎えた再生可能エネルギーの未来について、現在のトレンドから読み解いていきたい。
日本では20兆円規模に
太陽光発電は固定価格買取制度を背景に、急激な市場拡大を見せてきた。同時に大規模導入にともない、電圧変動など電力系統への悪影響が顕著になってきたという問題も生じている。それが、九州電力から始まった「無制限・無補償の出力抑制」という措置につながっていった。
今後は発電の変動緩和や出力が一定になるよう制御するため、蓄電池の活用がさらに広がりそうだ。
たとえばアメリカのカリフォルニア州では、民間電力会社に対し、2020年までに合計1,325MWのエネルギー貯蔵用蓄電池の設置を義務付けた。今年2月末締め切りで78MWの競争入札が実施されたが、約64倍の5,000MW以上応募があったという盛況ぶりだ。そんな動向もあり、欧米各社は虎視眈々と蓄電池のシェア拡大を狙っている。産業用のみならず、住宅用にも需要が拡大するという予測も広まっている。その背景には、太陽光発電の電力を売電するよりも自家消費する方が経済的に有利になる、いわゆる「蓄電池パリティ」の流れができつつあることがある。
とはいえ、日本の蓄電池は数百万円する非常に高価なもので、一般人にはなかなか手の届かない製品だ。たとえば、新築時にオール電化との抱き合わせで導入すれば初期コストは抑えられる。蓄電池があれば月々の電気代は下がるが、それでも光熱費削減額が初期投資額を上回るというようなことはなかった。それでも売れたのは、国の高額な補助金があったからだ。これは海外でも例外ではない。
しかし、そんな高止まりの市場を一気に破壊する革命児が現れた。電気自動車で有名なテスラモーターズだ。4月に同社の住宅用蓄電池「パワーウォール」が、10kW/hモデルで3,500ドル、7kW/hモデルで3,000ドルの価格と発表されるやいなや、「蓄電池パリティが大きく前進する」と再エネ業界がどよめいた。実に日本メーカーの4分の1から5分の1程度の価格だ。
ドイツで「インターソーラー」という再生可能エネルギー展示会が行われたが、そこにも同社は出展。「今年は例年と様子が違い、蓄電池を出しているブースがかなり増えた」と参加者の1人は語るが、そのなかでも同社はひときわ異彩を放っていた。蓄電池市場は、再生可能エネルギーの普及と歩調を合わせて伸びている。経済産業省は2020年に世界の蓄電池市場が20兆円規模に拡大すると予測。住宅用ならバックアップ電源として、産業用ならビルエネルギーマネジメントやスマートコミュニティなどへの導入が進んでいるからだ。
テスラの「パワーウォール」をきっかけに蓄電池全体の価格が下がり、「蓄電池パリティ」を達成すれば、再エネ普及は新たなステージを迎えるだろう。「蓄電池は高額商品」という時代が終わり、今後は売電収入から自家消費へシフトしていくというトレンドが到来しつつある。【大根田 康介】
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