2024年03月29日( 金 )

王将の第三者委員会「調査報告書」を読む~福岡センチュリーゴルフクラブの上杉昌也氏とのズブズブな関係(後)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ
法人情報へ

262億円の資金が流出

 朝雄氏と昌也氏の関係は、1977年頃から始まった。85年5月に開店した阪奈生駒店出店にあたり、昌也氏の口利きで建築関係の許認可が早く下りたことで関係が強まった。

money 王将フードサービスで、大事件が勃発した。89年2月、戎橋店で失火による火災を起こし、ビルのオーナーが死亡した。97年3月、慰謝料3,700万円と、建物滅失による損害賠償1億1,700万円を支払うことで和解した。
 和解にあたり、遺族との間で、戎橋店の土地建物の買収交渉を請け負ったのが昌也氏だった。報告書は「土地建物の購入代金は9億円で合意に至ったが、A氏(つまり昌也氏)に買収工作資金として1億円を支払った」ことを明らかにした。

 昌也氏はバブルの時期に地上げで荒稼ぎしており、戎橋店の地上げはお手のものだった。
 バブルの時代、土地成金は海外の不動産を買い漁った。昌也氏もご多聞に漏れず、ハワイの高級住宅街にある邸宅を購入した。
 しかし、バブルは崩壊。地価下落で、不動産会社に巨額な資金を貸し付けていた住宅金融専門会社が天文学的な損失を出した。95年に政界を揺るがした「住専門題」だ。住専の大口融資先に名を連ねていたのが、昌也氏が経営する京都通信機建設工業だ。
 住専との資金パイプが断たれて、経営危機に陥った京都通信建設工業の助け人として手を差し伸べたのが王将である。

 報告書によると、件のハワイの高級邸宅は、95年7月、王将の100%子会社の(株)キングランドが18億2,900万円で購入。2003年7月、キングランドは第三者に5億9,800万円で売却した。
 王将はキングランドを通じて98年、京都通信機建設グループに185億円を貸し付けた。一部返済を受け、貸付残高は89億6,000万円になった。

 報告書は上杉昌也氏が経営する企業グループとの不透明な取引を一覧表にまとめている。10億円以上をリストアップしてみよう(別表)。

hyou

 取引額は262億円であるが、53億円の代物弁済を受けており、純額は209億円の資金が流出し、このうち176億円が回収されなかった。これが報告書の内容である。
 王将がなぜ、巨額な資金をつぎ込んだのか。創業時に佐一郎氏が数百億円の資金の口利きをしてもらったことに対するお返しと思われるが、報告書は、この点には触れていない。朝雄氏と佐一郎氏の関係は、タブーになっていることをうかがわせた。

上杉氏のグループ企業の借金減らしに協力

 福岡センチュリーゴルフクラブをオープンしてから、上杉昌也氏は、活動拠点を福岡に移した。報告書には、おなじみの物件が多数登場する。

 福岡センチュリーゴルフクラブが本社を置いている福岡市中央区赤坂の9階建ての赤坂ビル。王将は2000年に12億3,700万円で購入。このうち8億5,700万円は、キングランドの同ゴルフ場に対する貸付金と相殺。02年に昌也氏のグループ企業に5億2,000万円で売り戻している。
 王将は、昌也氏のグループ企業から、福岡県甘木市のゴルフ場のホテル棟、ゴルフ場の隣接地、養鶏場施設、福岡県うきは市の「ヘルスケア原鶴」、福岡市高宮のマンション、長崎県の雲仙温泉に旅館などを購入した。
 雲仙で購入したのは、雲仙温泉屈指の超高級旅館「半水廬(はんすいろ)」。6,000坪の庭園と数寄屋造りの全14室が離れというのがウリだった。

 その後、大半の物件は購入した1割程度の値段で昌也氏側に売り戻した。王将が損失を負担して、昌也氏の企業グループの借金を減らすことに協力したわけだ。
 だが、その甲斐もなく、京都通信建設工業は06年12月に解散。親会社がコケて、子会社のゴルフ場も倒産に追いやられた。福岡センチュリーゴルフクラブは11年6月、福岡地裁に民事再生法を申請した。負債額は関連会社を含めて428億円に上った。王将には、借金軽減に協力した170億円の損失が残った。

上杉氏との関係を絶つ

 第三者委員会の報告書は、13年11月に王将に提出されている。それが今になって公表に踏み切ったのか。考えられることはひとつ。大東隆行前社長射殺事件の警察の捜査が大詰めを迎えたと判断したからだろう。
 逮捕者が出てからでは遅すぎる。王将と昌也氏の闇が白日にさらされる。その前に、昌也氏との関係を絶っておく必要がある。

 王将は3月30日、昌也氏のグループ企業に対する電話設備などの保守委託契約を解除した。06年4月から15年11月まで計3,430万円を支払っていた。第三者委員会から、この委託契約は不適切だと指摘されていた。第三者委員会の指摘を、昌也氏との関係を絶つ名分にした。だから、報告書を公表した。
 王将は、「(上杉昌也氏や企業グループとは)一切取引しないと確約する」との声明を出した。

(了)

 
(前)

関連記事