2024年03月19日( 火 )

出光家代理人の浜田氏が辞任~創業家と経営陣の攻防を占う(前)

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 出光興産(株)(以下、出光)の創業家の代理人、浜田卓二郎弁護士が辞任――。何があったのか。出光は2月7日、昭和シェル石油(株)との合併に反対する出光創業家(以下、創業家)との直接協議の再開に向け、代理人同士による交渉を始めたことを公表した。その3日後の2月10日、浜田卓二郎氏が代理人を辞任すると発表した。合併を巡る創業家と経営陣の対立の行方はどうなるか。

代理人を辞任した浜田氏の注目発言

 各紙の報道は、創業家代理人である浜田氏の突然の辞任で先行きは見通せないという見方では一致している。日本経済新聞は「先行きは不透明さを増している」、朝日新聞は「対立の行方は不透明になっている」、毎日新聞は「事態の収拾が遠のく可能性がある」、産経新聞は「協議の行方は一層不透明となりそうだ」、読売新聞は出光側の「今後の協議にどのような影響が出るか見通せない」とのコメントを載せている。

 今年1月に、双方の代理人同士が水面下で協議再開に向けて話し合いを進めてきた。出光は2月7日に、創業家との話し合いを正式に発表したばかり。それが一転、創業家側の代理人が辞任した。戸惑うのも無理もない。各社の報道を見てみよう。

 「事態が急変したのは今月9日午前。浜田氏は出光美術館で創業家の出光昭介名誉会長と会い、今後の出光経営側と協議方針を話し合った。その際、浜田氏は出光経営側と創業家の対立解消を模索すべきだとの考えを表明した。だが昭介氏からは明確な方針が示されなかったとみられる。この結果、浜田氏はその場で代理人と創業家の資産管理会社「日章興産」の代表取締役を辞任すると伝え、昭介氏も受理した。」(日本経済新聞2月11日付朝刊)

 「浜田氏は10日、『昨年10月に合併の無期延期が表明され、その後、統合の基本合意も実質的に白紙撤回され、1つの目標は達成できた』などとするコメントを出した。(中略)同氏はコメントで『出光昭介名誉会長からは、できるだけ争わずに話し合いで決着してもらいたいという委任を受けた』とし、『委任の趣旨を踏まえて代理人を辞任する』としている。」(朝日新聞デジタル2月10日付)

 これらの記事を読むと、今後の交渉方針を巡り創業家と代理人との間で意見の相違が生じたことがわかる。ただし、何について対立したかは触れていない。筆者が最も注目したのは、朝日新聞に載った浜田氏のコメントである。この件は後で述べる。

 米通信社のブルームバーグ(2月10日付)は「出光興産の創業家の新しい代理人に弁護士の鶴間洋平弁護士が就任した」と関係者の話を伝えた。
 鶴間弁護士のウェブサイトによると、同氏は96年に慶應義塾大学を卒業し、2000年に弁護士登録。11年から13年の間には原発事故被災者の弁護団に参加していた。13年から寺本法律会計事務所のパートーナー(株式会社の株主にあたる)を務める。出光のお膝元・福岡とも縁がある。鶴間氏は転校生として、福岡市立美和台小学校、和白中学校に通っていたのだ。

 鶴間氏が浜田氏の後任の創業家代理人として、出光との交渉に臨むことになる。出光側の交渉役は日本最大の法律事務所、西村あさひ法律事務所。元大蔵省の証券局長の長野厖士弁護士など著名な弁護士を多数揃えている。

(つづく)

 
(後)

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