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2017年07月11日 07:03

出光興産が公募増資、創業家を封じ込めるカードを切った!(後)

経営陣と創業家の対立の根本的要因は、増資問題にあり

 経営陣と創業家が対立してきた根本的要因は増資問題だった。上場時にさかのぼる。

 出光興産は2006年10月24日、東証一部に上場した。1911年の創業から100年近く、外部資本に頼らず独自の道を歩んできた出光が、やっと外部資本に門戸を開放した。出光の上場計画は1990年代から始まったが、創業家の出光昭介氏が猛反対してきた。上場計画が暗礁に乗り上げ、出光は巨額な借入金を抱え倒産の危機に瀕した。昭介氏に引導を渡したのは銀行だった。2001年、昭介氏は会長を退任。非同族の天坊昭彦氏が社長に就任した。
 天坊社長のもとで、出光は上場に漕ぎ着けた。昭介氏は上場を認める条件に、出光株式の3分の1超を持ち続けることを要求したという。上場後も、拒否権を持つオーナーであることを狙った。天坊氏ら経営陣がこの条件を受け入れたことが、今回の対立の根柢にある。

 出光は海外で製油所を建設し、石油・ガス田を開発するには巨額な資金が必要だ。その資金を調達するため経営陣は何度も増資の機会を探っていたが、昭介氏の反対で頓挫した。
 神風が吹く。政府主導で石油再編が進んだ。2015年7月、出光経営陣は昭和シェルとの経営統合に合意。同年11月、統合方針を「合併」に決定した。昭和シェルとの合併に創業家は猛反対した。
 創業家の反対理由は、昭和シェルが外国資本であること。出光は大家族主義だが、昭和シェルには先鋭的な労働組合があること。企業文化が水と油ほど違い、合併してもうまくいくわけがないというもの。だが合併反対の根本的理由は、合併すれば、創業家の持ち株比率が3分の1を下回り、経営に対する拒否権を握れない。これが“ホンネ”であった。

創業家の決定権者は、昭介氏の妻の千恵子夫人

 創業家側で動きがあった。創業家の代理人を務めていた浜田卓二郎弁護士が2月10日、辞任した。経営陣が2月7日、創業家との直接協議の再開に向け、代理人同士による交渉を始めたことを公表した直後だ。

 創業家内で何があったのか――。やがて、その真相が明らかになる。創業家で権力の移行が行われた。高齢な昭介氏に代わって実権を握ったのは、昭介氏の妻・千恵子夫人である。

 「名誉会長の昭介氏というより、千恵子夫人の存在が大きい」。出光ウォッチャーの一致した見方だ。昭介氏が日本航空(JAL)の客室乗務員だった千恵子さんを見初めて結婚したのは有名な話。千恵子夫人は福島県会津出身で、実家は土建業や出光のガソリンスタンドを営んでいる。

 昭介・千恵子夫妻には2男1女の子どもがいる。長男の正和氏は、創業者の出光佐三氏の直系の孫として、後継者と目されてきた。若くして神戸支店長に抜擢されたが、支店トップの重責に耐えられず出光を辞めた。現在、出光家の資産管理会社、日章興産の社長だ。
 次男の正道氏は海外留学後、体調を崩し5年間も休職。戻ってきたのは4年前。佐三氏の直系で、ただ1人出光に残っている。だが、ビジネスマンとしてキャリアを積んでいないため、本社の一社員にとどまる。

 創業家の代理人を務める浜田弁護士は、今年に入って、経営陣との和解に動く。それに激怒したのが千恵子夫人。浜田弁護士を代理人から解任した。
 『週刊新潮』(17年6月29日号)は、「『出光興産』統合を阻む黒幕は『イメルダ夫人』」と報じた。イメルダ夫人とは、フィリピンのマルコス大統領夫人をいう。美貌を武器に大統領夫人にまで上りつめ、約20年にわたり権勢をほしいままにしてきた。出光の社内では、昔から千恵子夫人を“イメルダ夫人”になぞらえて恐れられていたそうだ。千恵子夫人の知人が週刊新潮に語っている。

〈「出光家では、昭介さんの自宅マンションに家族が集まり毎週土曜日、創業家の方針を決める家族会議が開かれるのです。しかし、当主の昭介さんや正和氏は顔を出さなくなり、千恵子さんと正道氏、それに正道氏の妻だけで家族会議が行なわれることが多いそうです」〉。

 創業家の権力構造は、千恵子夫人と次男の正道氏に移行したということだ。

 6月29日に開かれた出光の株主総会に、創業家の代理人と鶴間洋平弁護士だけでなく正道氏も出席した。正道氏は昭和シェルとの合併反対をぶったが、攻撃の矛先を向けたのは相談役の天坊昭彦氏に対してだった。天坊氏は出光を倒産の危機から救った立役者である。
 天坊氏は、「上場するなら会社がなくなってもいい」と嫌がる昭介氏を説得して上場に漕ぎ着けた。だが千恵子夫人は、上場したことが許せなかった。天坊氏に丸め込まれて上場したと思い込んだ千恵子夫人は、天坊氏の追放に執念を燃やした。そのため、正道氏は株主総会で「相談役に破格の待遇を与えている」と批判した。翌6月30日、天坊昭彦氏は相談役を退任した。

 天坊氏が引き上げた出光の経営陣は7月3日、創業家を封じ込める切り札である増資カードを切った。出光昭介氏と千恵子夫人が代表する集団に退場してもらうと、腹を括ったのである。

(了)

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