2024年03月19日( 火 )

水道インフラの復旧に、熊本市はどう立ち向かったか(後)

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熊本市上下水道局

3段階で復旧活動、地震に耐えた新築庁舎から指揮

kumamoto_suido 地震による被害から早急な復旧の方針を固めた熊本市上下水道局。この方針に従って、職員は動いた。まずは「水源の確保」そして「基幹管路の復旧」最後に「末端地域の復旧」と段階的に着手。また、被災者の不安感の軽減、早期の生活の安定を目指し、16日の本震から3日間で可能な限り通水試験を行い、各戸の給水復旧を急いだ。

 「水源の確保」においては、水源となる井戸の応急復旧を最優先として、配水可能な水の確保を大前提とした。そして4段階に分けた応急給水の目標を掲げ、第1段階となる目標値は地震発生から3日目までは3L/人・日としつつ、第2段階となる3~10日目は20L/人・日、第3段階の10~20日は100L/人・日、最終目標となる第4段階は20~28日目には230L/人・日としたのだ。この応急給水活動には4月15日から5月6日まで104団体(98都市)、延べ4,306名の支援を受けた。市では給水車や車載用タンクによる応急給水を準備していたが、想定をはるかに超える断水となり、他都市や自衛隊による給水支援を受けることで、なんとか対応できた。
 次に「基幹管路の復旧」では、最重要排水拠点である健軍配水池からの通水を4月16日から開始。沼山津の直径800mmの送水管の通水を開始するなど復旧対策の糸口が見えてきた。
 最後に「末端地域の復旧」として配水池から試験通水を開始し断水地域の解消のために漏水対策を行った。この配水管等の漏水修理を担当したのは熊本市管工事協同組合の面々。日本水道協会九州支部に応援を要請し健軍・秋田配水地区の漏水調査を実施し、4月19日から47都市延べ5,450名が応援に駆け付けてくれた。

fukkyu3 このように段階的かつ早急な作業を行ったことで4月26日には断水地域は完全に解消し、全区域の適正水圧で安定した配水をすることが可能となった。その後万日山、徳王、北部(和泉)、城山となる4つの配水区で計画断水を行い配水池の水量を確保。4月30日に通水試験を終えて、最後まで供給できていなかった城南町築地地区への水道水の供給が確認されたことで、熊本市の全域で水道水の供給が確認された。これは大西一史市長も会見を開き市民に報告を行ったのだ。
 4月16日の午前5時10分発表の4時30分現在市内全域で断水状態から、順次通水情報をホームページに公開。4月30日における完全通水100%まで85回もの情報更新が行われた。水道水が来るのを心待ちにしている市民へ水の供給を第一とし、断水から約2週間で完全復旧を成し遂げたのだ。
 その市民の不安を少しでも解消するために電話受付を開始。「水がでない方専用コールセンター」を立ち上げて市民からの情報をもとに復旧活動に反映させた。4月25日には1日最大の6,139件の入電数があったが、減少傾向となり5月13日現在では100件を割るようになった。

1カ月間で1年分の修理件数、政府へ特別措置を要望

fukkyu4 4月14日から5月14日までの漏水通報及び漏水調査による発見件数は5,070件(5月14日現在)、そのうち上下水道局での対応分は3,772件、対応済みは2,524件(約67%)となっている。このうち、修理済みは約160件。これは熊本市上下水道局が年間で取り扱う件数に相当する。しかも、管路被害については、まだ多数の漏水が確認されており、今後も修理が不可欠である。
 このため市では「上水道施設災害復旧費の国庫補助について、補助率をかさ上げするとともに、供給管修理や漏水調査なども補助対象とするなど、政府に対して採択要件を拡大する特別措置の要望を行っています」と政府への特別救済の一環として要望している。
 熊本市上下水道局では、06年度から管路の耐震対策として耐震管の布設を開始。災害時などにおいても各配水区間で水の融通ができるように配水管網の整備に着手してきたところだった。だが、今回の地震により施設に大きな被害を受けた。その復旧費用に加え、今後の減災対策などについても検討の見直しを図らざる状況にある。「今後はこれまで以上に管路の耐震化を取り組んでいくことになる」と担当者は語る。

 九州の地震安全神話はすでに瓦解しており、いつどこで地震などの災害が発生するのか誰にもわからない。ただ、災害に負けず、水を市民に供給する使命を持つ人たちのおかげで人間に一番不可欠な"水"が使えるのだ。この地震を教訓にして災害対策が図れる安全な都市づくりが進むだろう。

(了)
【道山 憲一】

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