2024年04月20日( 土 )

九州の各地を結ぶ交通の要・鳥栖(後)

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 古くは長崎街道の宿場町として、その後は鉄道のまちとして栄え、現在は九州自動車道および長崎・大分自動車道が交差する鳥栖ジャンクションに象徴されるように、九州各地を結ぶ結節点として知られる佐賀県鳥栖市。地の利を生かした内陸工業都市や物流拠点都市として発展してきた同市は現在、都市計画マスタープランの策定を掲げ、さらに“住みよさが実感できるまち”を目指している。

鳥栖プレミアム・アウトレット

 また、最先端の技術施設が集結しているのも特徴の1つ。九州初となる重粒子線によるがん治療施設「九州国際重粒子がん治療センター」を始め、製造技術研究部門を有する「産業技術総合研究センター」、シンクロトロン光技術の応用研究施設の「九州シンクロトロン光研究センター」と、最先端の研究機関がわずか5km圏内に3つもそろっているのは世界でも稀とされ、今後はこうした最先端技術関連の産業集積が進む可能性もある。

 さらに、大型商業施設を有していることも鳥栖の強みだ。04年3月にオープンしたアウトレットモール「鳥栖プレミアム・アウトレット」は、13.4haもの広大な敷地に約150店舗が軒を連ね、県内外はもとより、大型バスで外国人旅行客が乗り付けるなど、年間約500万人が訪れる一大商業施設となった。現在、最寄りのJR弥生が丘駅と鳥栖プレミアム・アウトレットとを結ぶ道路沿いには飲食店などが立ち並ぶほか、周辺では住宅地の開発などが行われ、商業施設を起点としたまちづくりが着々と進んでいる。

20年後の将来を見据えてマスタープラン作成

 鳥栖市の人口は1920年の調査開始から増加傾向にあり、2012年には7万人を突破。その後も増加を続けており、17年11月時点で7万3,203人となっている。人口増加の要因は20代、30代を中心とした子育て世代の転入。「市として、IターンやUターン就職者を呼び込むキャンペーンなどは行っていませんが、やはり企業誘致の影響で、労働人口が増加しているようです」と市職員はコメントする。2010年の総務省統計によると、市外から市内への通勤者は1万9,639人、一方の市内から市外への通勤者は1万1,948人であり、その通勤流動の差は7,691人。鳥栖市が周辺地域の雇用の受け皿となっているといえる。

 鳥栖市では現在、「都市計画マスタープラン」の策定に向けた検討を進めているが、それに先立ち17年8月に、2,000名の市民を対象にアンケートを実施した。市民からの意見では「福祉・子育て・教育、医療、防災、防犯などが充実し、安心して暮らせるまち」が全体の76%を占めたほか、市の活性化の重点項目として「駅周辺の整備」が挙げられた。市はこのアンケート結果も参考にしながら、全体構想素案や地域別構想、新たな産業団地や住宅地整備のための土地利用構想や将来道路網についてもとりまとめ、今後3年をかけてマスタープランを作成するとしている。

 地の利を生かした内陸工業都市や物流拠点都市としてのイメージが強い鳥栖市だが、橋本康志市長が掲げる「住みたくなるまち鳥栖」をスローガンに、今後、新たなまちづくりが進んでいくだろう。

(了)
【道山 憲一】

 
(前)

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