（株）エコ・フロンティア　統括営業本部長　陶山　貴祐

＜無給水循環式の環境トイレ「ecolet」＞

　株式会社エコ・フロンティアが販売を展開を行なっている、微生物の力によって排泄物を分解する環境トイレ「ecolet」―この核となる「KSCシステム」は、微生物の力で排泄物をすべて空気と水に分解し、処理水を放流せずに循環再利用するというシステムである。

　おおまかな流れを説明すると、排泄物はまず「原水槽」に行き、その後、「嫌気槽」、「好気槽」、「沈殿槽」、「調整槽」という4つの行程が１つのタンクのなかで行なわれる。この部分は、下水道でいうところの「処理場」で、ここである程度浄化された水が「反応槽１」で最終的に分解され、臭いの元が除去される。その後「反応槽2」を通すことで濁りを取り、無色透明の水として「貯水タンク」に上がる。また、最終的に微生物が空気と水に分解してしまうため、残渣は残らない。出た水については、システム内で半永久的に循環していくことになる。
　さらに、この出た水というのは浄化された無色透明のきれいな水であり、ここで処理しただけでも、合併浄化槽などの数値よりも低い基準まで落ちている。したがって、最終的に出てくるのは、極端な話「飲んでも大丈夫」な水であり、上水と違うのは、塩素処理などの薬品の処理をしていない、という部分のみになる。
　まさに、自己完結型の環境に優しいトイレである。

＜積極的な海外展開と国内展望＞

　同社の製品は海外でも高い評価を受けており、さまざまな場面で活用されているという。
　たとえば、「北京オリンピック」の会場では、常設のトイレだけでは足りず、同社の仮設トイレが実際に使用されている。また、今年５月から開催された「上海万博」会場内にも20台の仮設トイレが設置されたという。
　そのほかの海外事例では、台湾の軍関係に売り込みたいという人からのオファーがあったり、ルーマニアの首都ブカレスト市長からの注文、イスタンブールからの受注もあったという。同社の環境トイレは世界中から注目を集めているようだ。
　積極的に海外展開を行なう理由について、同社統括営業本部長の陶山貴祐氏は次のように語る。
　「水という資源は、世界的に見れば600兆円規模のビジネスになっています。ですが、私たちが生活するうえで飲料水などに使える水というのは、地球にある水のわずか２％です。日本はたまたま水資源が比較的豊富な環境ですが、アジア、とくに中国などは工業用水をどんどん使用しており、水の問題というのがすごく取り沙汰されています。これは、日本には水があるからといって目を瞑っていいという問題ではありません。水という資源をいかに大事にしていくかという部分で、このシステムを広めていきたいというのが私たちの考えです」。
　また、今後は国内での展開も考えているという。主に想定しているのは観光地や山などの下水道が通っていない地域であり、実際にその辺りからの話もよく来ているとのこと。ほかには、高速道路の料金所やSA・PAへの設置、駅のホームへの設置なども考えているという。
　最後に陶山氏は、「環境を考えて、日本国内でもこのシステムが広まっていってほしいですね」と語っていた。
　自己完結型で半永久的に使え、地球環境にも優しい環境トイレ―これからのますますの普及が期待される。

＜プロフィール＞
陶山　貴祐（すやま　よしまさ）
1969年生まれ。福岡県出身。93年、九州産業大学経営学部産業経営学科卒業。09年7月に同社に入社、営業部長に就任。趣味は、陸上競技、球技（野球、サッカー、ラグビーなど）、車。

＜会社概要＞
（株）エコ・フロンティア
代表者：陶山　貞淑
所在地：福岡県糟屋郡須恵町大字植木827-2
設　立：2008年11月
ＴＥＬ：092-935-8588

※本稿は以下の書籍に掲載されています。

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