<第五章 谷本次期頭取誕生の軌跡>
協力者たちとの絆(17)
第16代の組合委員長となったS大学出身の河内貴義は営業統括部長となったが、取締役にはなれなかった。その大きな理由の一つには、山上の保険勧誘に積極的に協力しなかったことが上げられる。また協力預金の預け入れにおいても、山上とトラブルとなったことも響いた。
第五生命は期末の協力預金として、100億円の預金を維新銀行東京支店に預け入れをしていたが、山上は自分の保険勧誘に協力した支店に1億円単位で預け入れることを要求。
河内は、第五生命の預金は維新銀行に対する協力預金であり、支店別に割り振ることを認めると営業統括部が第五生命の保険獲得を推進していると取られかねないため、難色を示したことが山上の心証を損ねる結果となった。
河内は谷本頭取と同窓のS大学の後輩であり、組合の委員長も務めたとの自負もあったしプライドもあった。しかし谷本と山上との絆の方が格段に強かった。山上を甘く見ていたことが命取りとなり、河内は役員になるチャンスを失った。
書記長の原口俊也は東京のG大学出身で、2003年6月、谷本頭取からバトンタッチを受けた谷野銀次郎頭取から役員に任命され取締役福岡支店長に就任した。「頭取交代劇」では、沢谷や松木などの組合出身者の誘いを受け逡巡したが、最終的にはその誘いを受け入れ「谷野頭取罷免」に加わることになる。
第17代の委員長となった北野俊弘は、谷本が本店営業部の副支店長の時代から、栗野と共に山上の保険協力をして谷本に認められ、委員長に推薦された経緯もあり、三役では一人役員となった。「頭取交代劇」では、当然谷本の指示に従って、「谷野頭取罷免」に動いた。
第18代の委員長となった木下秀男は、東京のH大学出身で電算部門に永く在席。一度県外の支店長として営業店を経験した後、再び電算部門の部長に戻って役員となった。銀行内部の専門部署に携わっていたことから、山上の保険勧誘に晒される機会はなかった。組合出身の役員のなかで、唯一人谷野頭取罷免に反対した人物であった。
その当時の一般行員には、谷本と組合幹部出身者達との深い絆に気付く者は少なかった。と言うのは、谷本が尽力して組合を立ち上げた当初数代の組合委員長や副委員長は谷野よりも年上で、絹田頭取や植木頭取によってその実績を評価されて取締役となっており、谷本が影響力を行使したものではなかった。しかし植木から頭取職を受け継いだ谷本は、次々と組合出身者を取締役に登用していったことから、一般行員にもその関係が注目されるようになった。
「頭取交代劇」に登場する組合幹部出身者の取締役は以下の8名で、このうち谷本頭取が取締役に任命したのは沢谷から木下までの7名であった。原口は谷本頭取の後を受けた谷野頭取が任命した取締役であった。

「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」
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