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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(63)
経済小説
2012年6月21日 13:00

<第五章 谷本次期頭取誕生の軌跡>

協力者たちとの絆(19)

 2002年6月、谷本が頭取を退任し相談役となり、栗野代表取締役会長(CEO)、谷野代表取締役頭取(COO)の二頭による維新銀行がスタートした。
 谷本頭取の後を受けた谷野頭取を栗野会長、沢谷専務と石野専務が補佐する陣容であった。「谷野」の頭取就任を祝福するように、谷本の「谷」と沢谷の「谷」、栗野の「野」と石野の「野」が支える万全の体制であった。当初はお互いに協力していたが、銀行内部の業務はすべて最高執行責任者の谷野が仕切っており、栗野は代表取締役会長の肩書ではあったが、営業のラインから外れた形になっており、次第に二人の仲は悪化し、軋轢が表面化するようになっていった。

 そんななか、04年の2月、栗野は右足に激痛が走り歩行が困難になった。市内の厚生会病院に検査入院し、「下肢末梢動脈閉塞症」と診断された。主に糖尿病が原因で、動脈硬化によって右足の動脈が途中で詰まる病気で、長期間の入院治療が必要となった。
 栗野は症状の回復が思わしくないことから退任を考えるようになっていた。しかしこのまま谷野に頭取を続けさせるには口惜しいとの気持ちが交錯し、なかなか決心がつかずベッドのなかで悶々とした日々を過ごしていた。

byo.jpg そんな時に厚生会病院に見舞いに駆け付けた谷本から、
 「谷野君はどうも独走し過ぎて、役員のなかからついていけないとの声が出ている。1期2年は早いかもしれないが任期でもあるし、頭取を交代させるべきだとの強硬な意見も出ているが、君の考えはどうかね」
 と話かけられた。栗野は、
 「谷野頭取の独走が目につきます。昨年9月の赤字決算の発表も強引だったし、不祥事件の影響もあるでしょうが、最近余りにも厳し過ぎるとの声が役員のなかから上がっています。役員改選について話をした時に、北野常務や川中常務を退任させるような話もしていました。谷野頭取をこのまま続投させると大変なことになるのではと心配しています。入院してご迷惑をおかけしていますので、谷野頭取を交代させるのであれば、私も任期途中ではありますが一緒に退任する覚悟は出来ています」
 と答えた。

 谷本は栗野の病状が長引き、栗野が取締役会長の座を降りることになると、谷野に尚一層権限が集中し、独走することを懸念するようになった。そうなると自分も相談役としていつまでも居られなくなるとの考えを持つようになった。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」

▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)


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