<第五章 谷本次期頭取誕生の軌跡>
協力者たちとの絆(21)
沢谷は、
「組合出身の取締役では、私の他に吉沢常務、北野常務、川中常務、松木取締役それに大島取締役に声を掛ければ間違いないと思います。これで6名です。それに首都圏本部長の古谷取締役は谷本相談役の秘蔵子であり、そちらは谷本相談役にお任せします。それに栗野会長を入れると過半数の8名になります」
と自信に満ちた声になっていた。
谷本は、
「それで良いが、万が一ということもある。栗田会長の病状が悪化して取締役会議に出席できない場合、同数となることも考えておかなければいけない。もう1人声を掛けて万全な体制を取っておかないと失敗する可能性がある」
とこの計画を絶対に成功させるとの強い意思を込めて語った。
一方谷野頭取を支える本部執行部は、谷野と営業本部長の川中隆史常務、審査担当の梅原哲夫取締役、事務部門担当の木下秀男取締役、経営企画担当の小林辰彦取締役の5名であったが、営業本部長の川中は浮いた存在であり、一枚岩の体制ではなかった。
沢谷は「まず15人のうち、谷野に同調するのは、川中を除く本部執行部の4名と九州本部長の石野裕士専務、常盤支店長の堀部正道取締役の6名と思います。木下取締役は組合の委員長出身ですが、谷野頭取と一緒に行動をしており、声はかけない方が良いと思います。
そうなると声を掛けるのは原口取締役になります。彼は谷野頭取から取締役に任命されていますが、実質は谷本相談役が取締役にしたようなものですから、説得すれば間違いなくこちらにつくと思います」と言葉を続けた。
谷本は、
「うん それでいこう。但し、この件は絶対に隠密裏に動かないと失敗するので、万が一にも漏れることのないように慎重にやってくれないか」
と話し、沢谷に取りまとめを任せるせることにした。
沢谷は翌日、吉沢常務を西京支店に訪ねて、昨日谷本相談役と話した内容を説明し、谷野頭取罷免の動きに賛同を求めた。吉沢は事の重大さを認識したが、既に谷本相談役と栗野会長、沢谷の3名による計画であることを知って加わることに決めた。
沢谷は翌日広島に足を運び、北野常務を安芸本部に訪ねた。北野は谷野頭取が自分を退任予定の役員候補に上げていることを栗野会長から知らされていたこともあり、即座に谷野頭取の罷免計画に賛成することにした。
また沢谷は谷野頭取罷免の動きが露見することを恐れて、川中営業本部長に東南支店視察の名目で東南支店に来るように誘った。二人きりになったところで谷野頭取罷免についての話を持ち出した。
「谷野頭取が、川中常務は営業本部長としては失格だといって、退任予定の候補に挙げていたそうだ。そうならないためにもこの計画に賛同してくれないか」
と話すと、谷本相談役から耳打ちされていたのか、川中も即座に同意の意思表示を伝えた。
「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」
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