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「維新銀行」~第一部 夜明け前(68)
経済小説
2012年6月28日 07:00

<第五章 谷本次期頭取誕生の軌跡>

協力者たちとの絆(24)

 古谷政治は、谷本が1992年に頭取に就任すると、その2年後には41歳の若さで海峡市内の工業団地に近い扇町支店長に抜擢された。2年半の支店長在任中に、山上正代の保険勧誘に積極的に協力した実績を買われ、県外の大型店舗の支店長、海外の支店長を歴任。その後東京支店長となり、49才の若さで取締役首都圏本部長になった。後に展開する「谷野頭取罷免クーデター」後に、取締役から一気に頭取に選任されることになる。

A-3.jpg 植木頭取時代は役員を選任する場合、自身の哲学に基づき、辛抱強くその職務を全うし部長職に辿りついた者のなかから選別をしていた。そのため組合幹部出身者が人事部長になり、取締役に選任されるケースはあるが、たとえ組合幹部出身者であっても部長職になれない者を取締役に選任するようなことはしなかった。また取締役の役付役員への昇格についても経験と実績を積んだ者を登用し、決して私情を差し挟むことはしなかった。

 植木は谷本に頭取職を譲って会長となったが人事権を有し、亡くなるまでの4年間も取締役選任については自分の哲学を守り通した。
 その後植木が亡くなり人事権を谷本が持つようになると、取締役は一部の例外を除き(1)組合出身者、(2)谷本の同窓のS大学、(3)人事部長、から選ばれるようになった。
 組合幹部もS大学出身者が多く、人事部長も組合出身者かS大学出身者が選ばれるようになり、経営の中枢はS大学出身者で固められるようになった。
 そのため、維新銀行で取締役になるには、S大学出身者か組合の幹部になるかしか道はないとの風評が、行員のみならず取引先からも聞かれるようになった。

 しかし実態はそれだけでは足りなかった。最終関門をパスするには、山上の保険勧誘に積極的に協力し、山上の推薦を受けないと取締役登用への扉は開かなかった。
 後に展開する「頭取クーデター」に参加するのは、組合出身の役員7名(うちS大学OB3名)、S大出身の役員2名の計9名で、いずれも共通するのは山上の保険勧誘に協力した者たちであった。谷本亮二が築き上げた組合幹部出身者とS大出身者たちは、山上の保険勧誘の協力という絆で結ばれており、その絆は非常に強いものであった。

 植木頭取も腹心である笹川常務も、谷本を頂点としてアメーバのように張り巡らされたネットワークによって、組合元幹部たちが泥臭い人間関係を構築しているとは夢にも思わなかったし、また谷本と山上が組合出身の幹部達を協力者にして、維新銀行内で違法な保険勧誘を繰り返している実態を知る由もなかった。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」

▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)


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