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経済小説

「維新銀行」~第一部 夜明け前(71)
経済小説
2012年7月 3日 10:01

<第六章 谷本次期頭取誕生の軌跡>

クーデター未遂事件(3)

img_2.jpg 1991年6月、谷本は株主総会で再任され、引き続き専務取締役首都圏本部長を委嘱されたが、好景気を続けていた日本経済のバブルが崩壊した年であった。
 85年のプラザ合意以降、経常収支の黒字是正を目的とした政府の内需拡大策により、5回にわたって公定歩合が引き下げられるなど、積極的な金融緩和措置がとられた。そのためマネーサプライが長期にわたって増大し、行き場を失った余剰資金が過剰流動性として土地、株式等へと向かった。

 80年代後半、地価や株価の上昇が大幅かつ継続的なものとなるにつれ、国民全体に更なる値上がり期待が高まっていった。この価格上昇期待が、株式投機による財テクブームや地上げなどによる過度な土地投機につながり、自己増殖的に資産価格を上昇させた。資産残高の著しい増加は、消費面では資産効果により耐久消費財を中心に消費額を増加させ、企業にとっては資産の担保能力の増大により新たな事業展開や設備投資のための資金調達が容易になった。

 一方金融機関は70年代半ば以降製造業の銀行離れが進んでいたため、金融機関はこぞって、中小企業や個人向け、さらには不動産業やノンバンク(リース、信販、住宅金融会社等) 向けの貸出競争に走り、結果的に土地・株式に対する投機行動を資金面から支えることになった。

 金融緩和の歩調に合わせるように都銀を始めとして銀行は、ノンバンク融資や不動産融資などを加速させていった。
 金融機関同士が融資競争を繰り広げるなか、87年(昭和62年)6月、谷本は営業本部長に就任。谷本にとっては営業面でもその手腕が通用するかどうかを問われるポストであった。しかし谷本営業本部長は、植木頭取が言う「コツコツと経験を積み、その職責を果たした者を役員として登用」した人材ではなかった。エリートコースを歩んできた谷本にとって、試練のポストでもあった。

 谷本は営業本部長に就任すると、営業推進部長や融資部長の意見を取り入れて、住専やリース、信販会社などのノンバンク融資を拡大する方向に舵を切っていくことにした。但し、ノンバンクへの融資については都銀系列であっても、上位の都銀の系列でその支援がはっきりしていること、また地銀系列のノンバンクについては、維新銀行と同等以上との条件をつけたが、後にバブルが崩壊すると親銀行自体が存続の危機に見舞われ、その系列のノンバンクに融資した維新銀行も大きな打撃を受けることになる。

 そのため谷本が営業本部長に就任した88年3月期決算は、まずまずの業績を確保することが出来た。しかし谷本営業本部長が汗を掻いた融資ではなく、ノンバンク融資の増加によって数値目標を達成したことに、植木は内心苦々しい思いで一杯だった。

(つづく)
【北山 譲】

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「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」

▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)


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