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東日本大震災

原点は「変えなきゃいけない」 過酷な戦いを支えてきた力~福島県南相馬市長 桜井 勝延 氏(2)
東日本大震災
2012年7月25日 07:00

 「世界の皆さま、南相馬市へのご支援をよろしくお願いします」――福島第一原発事故直後、動画サイトを通じて世界にこう訴えた福島県南相馬市長の桜井勝延氏。あれから1年以上が経ったが、いまだに国家主導の復興は道半ばだ。市民が放射能という見えない恐怖と戦うなか、度重なる過酷な決断を強いられてきた桜井市長は今、胸の内にどのような思いを秘めているのか。また、ここまで自身を支えてきた力の原点とは。

(緒方 克美、大根田 康介)

<「見えちゃった」国の姿>
 現在、再建に向けて動きつつあるわけですが、原発事故で「見えちゃった」ところがあります。つまり、震災後1カ月くらいの間に、国が機能しない姿だとかマスコミが現場から立ち去っていった姿だとか、スタンスとして彼らの姿勢が「見えちゃった」感があるということです。

0725_sakurai.jpg 「この国で起こった事故で、なぜこの国のおかしさが見えちゃうの?」と、私の疑問は膨らむ一方でした。その際、被災者支援という名目で、民主党、自民党、公明党、社民党、共産党の各党首クラスの方々が"一応は"現地に来るわけです。ただ残念なのは、"被災地に来ただけ"なのです。私はその際、「厳しい状況だからこそ日本はチャンスだ」という言い方をしていましたが、それは「世界に対して日本の政治力を見せつけるチャンスだ」という意味からの発言です。

 原発事故処理については、政治家が結集して内閣に対しベターな政策を打っていくということを見せつけ、なおかつ被災地を復興させていくという意味で「世界に日本の力を見せつける最大のチャンス」でした。それにも関わらず、事故後わずか1カ月半足らずで論点を政局に持ちこむわけです。菅直人氏を追い落とすためにどうするか、政権内部からも外部からもそうした動きが出てきたわけですが、被災地からすれば「政府は何を勘違いしたことをやっているのか」という思いでした。

 本来なら、原発被災地である福島県、そして岩手県や宮城県などの津波被災地の復興が、財政出動しながら日本全体の景気を浮揚させる最大のチャンスでもあります。それをしないまま、今度はTPPの議論をしてみたり、八ッ場ダム建設再開の議論をしてみたり、今なら消費増税をしてみたり、政権としてストップすると決めたはずのことを再開する動きになってきたわけです。

 我々からすれば、農業がいっさいできなくなった状況で、なぜTPPの話が出てくるのか。ましてや高速常磐道も通れない、JR常磐線も寸断されたなかで、なぜ八ッ場ダムの話になるのでしょうか。現政権は、あり得ない選択をしているわけです。

 そして、今回の消費増税でしょう。ここで商売できない人たちが圧倒的に増えているときに、「何で消費税なの?」と被災地では当然のように思います。ところが、野田首相は国際公約なのかわかりませんが、海外に出て行ったときだけ都合の良い発言をするわけです。「福島の再生なくして日本の再生なし」と、野田首相が我々の目の前で言ってきたことが空々しく聞こえます。

(つづく)

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<プロフィール>
0724_sakurai_p.jpg桜井 勝延(さくらい かつのぶ)
1956年生まれ。福島県南相馬市出身。岩手大学農学部を卒業後、酪農に従事。2003年3月4日から10年1月10日まで南相馬市議会議員を2期務める。同年1月29日から南相馬市長。You Tubeで東日本大震災に見舞われた同市の被災状況を訴え、米タイム誌から「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。


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