<第六章 谷本頭取の時代>
クーデター未遂事件(24)
桜木は一瞬考えるような素振りを見せたが、
「私としては谷本専務の途中退任には反対ですが、植木頭取が後継の頭取のために考えた末の結論であるのであれば、植木頭取の申し出も納得できます。もし後継を決めずに植木頭取が続投するようであれば、谷本専務の途中退任に反対しますが、そうでなく後継者を指名した場合は、植木頭取の考えに従います」
と、述べた。桜木の回答は玉虫色ではあったが、要するに植木頭取が後継者を指名しないで続投した場合、谷本の途中退任には反対するとの回答を得て、竹下は北九州支店を後にした。
竹下は桜木との話し合いを終えて午後3時過ぎに本店に戻った。大部屋の役員室には2~3人の役員がいたが、それぞれが自分の所に回って来た稟議に目を通していた。
竹下は挨拶を交わした後、急ぎの稟議に押印するとその足で応接室に入った。早速首都圏本部の谷本専務に電話を入れると、ちょうど谷本専務は在席していた。
竹下は、
「谷本専務、北九州支店に行って桜木取締役と話をして今帰って来ました。笹川常務を通じて植木頭取から任期途中の退任要請が谷本専務にあったことを話し、任期途中の退任要請に反対するよう協力を頼みました。結論を先に言いますと、谷本専務の途中退任の要請には反対するといって、我々に協力すると確約しました。ただし、それには条件があって植木頭取が続投する場合であり、もし植木頭取が交代し新しい頭取を選任するのであれば、植木頭取の考えに従うとのことでした。私とすれば、白紙委任状の協力を期待していたのですが、それは無理でした。頑なに説得を続けると却って反発を招く恐れもあり、条件付きではありますが、協力を取り付けることになりました。
要約すると谷本専務の途中退任に反対し、植木頭取が新しい頭取候補を提案するのであればそれに従うということであり、谷本専務に頭取職を譲ればそれに従うということになります。従って、我々は今後植木頭取との話し合いにおいて、次期頭取に谷本専務を選任するように交渉すれば桜木取締役もそれに従うということになります」
と、弾む声で話した。
竹下の話を聞いた谷本は、
「竹下常務、それは良かった。これでかなり有利な展開になると思う。本当にご苦労さんでした」
と労いの言葉をかけた。竹下は、
「これで7人になりますが、西京支店長の佐藤常務との、その後の話し合いはどうなりました」
と訊いてきた。
「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」
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