<第六章 谷本頭取の時代>
クーデター未遂事件(35)
植木の家を後にした笹川は自宅の書斎に籠り、植木と打ち合わせしたメモを取り出し、箇条書きにしていった。
1.植木頭取は代表取締役会長に就任する
2.谷本の任期途中の退任要請を撤回し、次期頭取に後継指名する
3.新頭取は植木路線を継承すること
4.代表権は植木会長、谷本次期頭取の2名とする
5.役員の指名権を含む行内の人事権は植木会長。但し、その立案は谷本頭取に委嘱する
6.本件に至る経緯及び其の内容について極秘扱いとし口外しないこと。また双方とも行内融和を図ること
7.個別の問題点はその都度協議するものとする
一方笹川が帰った後、植木は、行内の揉め事が外部に漏れることを懸念して谷本に頭取職を譲ることを決めたが、代表取締役会長に就任後、その権力を維持するためにはどうすればよいかを想い廻らしていた。新聞にそのように書かれれば、谷本は植木から禅譲を受けたと世間に見られることになり、谷本は会長となる植木に反旗を翻すことが出来なくなると踏んだ。植木は任期途中の谷本を退任させることに失敗し、一転して頭取に昇格させる事態になったが、形の上では谷本派を取り込むことになり、谷本が仕掛けて来たクーデターを未遂に終わらせることができると考えた末の結論であった。
植木はたとえ谷本を頭取にしても人事権を握っておれば、谷本の思う通りにはさせない、と心に誓った。後は自分の健康をいかに早く回復させるかであった。
「この作品はフィクションであり、登場する企業、団体、人物設定等については特定したものでありません」
▼関連リンク
・「維新銀行」~第一部 夜明け前(1)
※記事へのご意見はこちら