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アメリカに学ぶ日本の弱点(5)~機能性が低い二院制
政治
2013年2月 7日 11:37

 強い日本を取り戻すための課題とは。アメリカや、日本と同じ議院内閣制のイギリスと比較しながら日本の問題点、弱点を考える。東京大学法学部の久保文明教授に聞いた。

<機能性が低い二院制>
 「日本は二院制がうまく機能していない。日本と同じ議院内閣制のイギリスは二院制だが、貴族院は選挙では選ばれないので、実質的には庶民院の一院制と言っていい。なぜ、日本の首相が、これまで短期間で替わったかというと、要因は参議院選挙にある。参議院選挙で負けて、その後、政治がこう着状態になることで、その責任を取る形で辞めることが多い」と、久保教授は分析する。

kubo.jpg 憲法を改正しなければ実現はできないが、1度二院制を崩して一院制に変えるとか、抜本的な改革をしてもいいかもしれない。「アメリカのように連邦制であれば、どこかに妥協点を見出さなくてならないので二院制の意義は高い。しかし、日本では弊害のほうが多く出ている。慎重に審議することが重要視されているが、それよりも、"決められない"で終わっていることが多い。二院制でなくてはならないということはない」と、久保教授。慎重さは、日本人の文化かもしれないが、グローバル化のなかで、より求められるのはスピード。意思決定の遅さは、企業、組織や日本の国益にとって、マイナス要因となりかねない。
 選挙制度は、その変革が議論され始めているが、決められない政治の原因の1つともなった衆参二院制の国会の形態を、時代に合った形に変えることを議論する時期に来ている。

<国際化に対応した人材育成を>
 アメリカだけでなく、アジアと渡り合うために、公務員の人材改革も必要だ。久保教授は、「日本の官庁は閉鎖的。大学を出て国家試験に通った人がそのまま官庁のなかで最後までやる。役所のなかに、多様なパースペクティブ(展望、広い視野、立場で物を見ることができる人材)を入れることができるか」と、公務員の人材の多様化の必要性を語る。

 たとえばシンガポールでは、優秀な高校生を選んで海外に留学させ、留学から帰ってきたら一定の期間、公務員として働くことを義務化し、官庁の人材の多様化、視野の多角化を図っている。意図的に、キャリアが違う人材、違った経験を持つ人材を、官庁、公的な機関に入れ、一般的なキャリアを歩んできた人とは違う人材を入れることで、組織が活性化する。日本の場合は、留学経験者がいるとはいえ、早い段階から留学した人材はまだ少ない。久保教授は「一部の公務員のように、英語が『ちょっとできる』程度の人材では太刀打ちできない。国際社会を相手に回して、喧々諤々の議論をできる人材を、公務員のなかに入れなければならない。視野が広い人材を育てるべき」と、指摘する。

(つづく)
【岩下 昌弘】

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<プロフィール>
kubo_pr.jpg久保 文明 (くぼ ふみあき)
1956年生まれ。政治学者。東京大学法学部外業後、1993年より慶応義塾大学法学部教授を経て、2003年より東京大学大学院法学政治学研究科教授。アメリカ政治に詳しく、アメリカ学会副会長、東京財団上席研究員などを兼任する。著書に「現代アメリカ政治と公共利益―環境保護をめぐる政治過程」(東京大学出版会)、「アメリカ政治を支えるもの―政治的インフラストラクチャーの研究」(国際問題研究所)など。


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