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火の粉が飛んでくれば、誰でも目をつぶる!~「嘘の見抜き方」若狭勝著(新潮新書)
書評・レビュー
2013年5月22日 16:56

 人は誰でも嘘をつく。嘘をつかない人はいない。この世は嘘に満ちている。嘘は複雑な心理や繊細な感情から生まれる「人間の専売特許」である。「嘘をつく」というのは、悪事ではなく、一定の人間心理によって引き起こされる「化学反応」のようなものだと若狭氏は言う。そして嘘が「化学反応」のようなものだとすれば、観察や分析によってある程度「方程式」が見えてくる。

 著者は、東京地検特捜部副部長、横浜地検刑事部長、東京地検公安部長を歴任、2009年に退官の弁護士である。大きな事件が起こると、新聞、TV等でコメントを求められることが多いので読者にも顔馴染みと思う。心理学者が書いた「嘘」に関する本は100冊以上あると思う。しかし、法曹人が書く本はそれらとは違い、いくつか特徴がある。1つ目は、学者でないので内容が難しくない。2つ目は、事例が時事的で臨場感がある。3つ目は、解説に"惜しみなく披露"と書かれていても核心に関する部分は披露されていない。検察の手の内をすべて明かしたら、今後犯人を逮捕できない。易しいので、気軽に、短時間で読めるのだが、何度か読み、"行間を読む"ことができれば、更なる味わいがある。

 本書は、人が嘘をつく4つの理由~嘘を見抜くための心得~嘘つきはこのセリフを使う~仕草から本心を見抜く~嘘を暴く質問とは~難しい敵の攻略法~自ら真実を語らせるには~人は気づかぬうちに嘘をつく~社会は嘘をどう扱うかの9章で構成されている。各章末にマトメがあるので、自分に関心のあるどの章からでも読める。

 1983年に東京地検に検事として任官以来、26年間、伝説の詐欺師から大物政治家まで取り調べてきた。「検事は、年がら年中、他人から嘘をつかれ、それを見抜く仕事をしてきたので、"嘘反応"に接する機会は心理学者を超えていると自負している」と著者は言う。

 「嘘」には(1)自分を守ろうとする「防御の嘘」(2)自分を大きく見せようとする「背伸びの嘘」(3)他人を陥れるための「欺瞞の嘘」(4)他人を守るための「擁護の嘘」の4つのパターンがある。

 「防御の嘘」は防衛本能からくるもので非難してはいけない。このような嘘を「心のまばたき」と呼ぶ。もし自分の顔めがけて火の粉が飛んでくれば、人は誰でも必ず目をつぶる。その時、なぜ「目をつぶるのか!」を問い詰めても仕方がない。現行法でも、被疑者や被告人が自分のために嘘をついたとしても、罪に問われることはない。浮気の言い訳で嘘をついたことのある読者は少し"ホッ"とするかも知れない。

 「欺瞞の嘘」は悪質で、「嘘」という観点で見れば、殺人犯、暴行犯より、詐欺犯の方が心が壊れている。前者の大部分が素直に、真実を話し、反省する傾向があるのに対し、詐欺犯の供述は徹頭徹尾嘘だらけである。

 一般的には、目を見て話すことは「誠実さを表すサイン」であるが、詐欺師など常習的に嘘をつく人は、アイコンタクトが多く、相手をじっと見つめ、視線をそらさない。著者の長年の実感として、女性は嘘をついても、相手の目を見つめる傾向がある。用心しないといけない。

 ビジネスマンにとって、明日から直接役に立つ話も載っているで、1~2例紹介する。

 「嘘を確かめる」時は、事象を木に見立て、枝葉を丹念に聞くのではなく、幹や枝の間をどんどん飛ぶように質問するのがよい。木が「幻」の場合はそれだけで混乱し、綻びを引きだすことができる。
 「黙秘する人」にも耳がある。こちらの言葉は必ず届いている。ひたすら話続けることによって、いつか向こうの心のコップを溢れさせることができる。

 最後に読者に「バレにくい嘘」を伝授したい。それは、「話に真偽が入り混じっている場合は、どこまでが真実でどこから嘘なのか、その境界が曖昧になり」ベテラン検事でも判別しにくく、起訴できない確率が高い。くれぐれも、悪用はされません様に!

【三好 老師】

<プロフィール>
三好 老師 (みよしろうし)
 ジャーナリスト、コラムニスト。専門は、社会人教育、学校教育問題。日中文化にも造詣が深く、在日中国人のキャリア事情に精通。日中の新聞、雑誌に執筆、講演、座談会などマルチに活動中。


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