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博多座の経営改善を支える"人々"(1)~芦塚日出美社長に聞く(前)
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2013年7月 1日 07:00

 2012年春、単年度黒字を目標と掲げ、計画通り5,000万円の総合利益を上げた(株)博多座。NET-IBでは、11年に博多座が再起をかけて経営改善計画を立てた当時の芦塚日出美社長への取材から、今後の博多座の営みに新しい風が吹き込むことを感じ、注目してきた。その鍵となるものは、まぎれもなく"人"だ。当シリーズでは、これから数カ月にわたって、博多座の現場で働く人々の姿に焦点をあわせ、描いていく。第1回目は、同社代表取締役社長の芦塚日出美氏に、総括的なご意見を伺った。

(聞き手、文・構成:黒岩 理恵子)

<失敗から学んだ自主制作が戦略に>
 ――2012年度はじめ、芦塚社長は中期経営戦略に基づき、5,000万円の単年度黒字を最重点目標として掲げられました。1年後、計画通り、5,000万円の総合利益を上げることができましたね。

0701_asizuka.jpg 芦塚日出美社長(以下、芦塚) 今年度は、興行演目を徹底的に吟味し、企画会議を重ね、興行計画を立てました。古い価値観は捨て、新しい顧客層を開拓するために、広い演劇市場を求めなくてはなりません。今までは、供給側から与えられるものを、検討することもなくそのまま引き受けてしまっていた面があります。まだ、事業計画が固まっていない頃に決定していた公演のなかには、「はたして、これを上演して、お客様が来てくださるのだろうか」と頸をひねるものもありました。

 ――そして、案の定、収益が上がらなかったと。

 芦塚 ええ。やはり、思ったとおりの結果になりました。演劇というのは水物であり、当たるか当たらないかも先が読めないと思われているかもしれませんが、過去の実績などからデータを抽出し、興行収入率と興行収支を分析、評価、検討を行なえば、何を選択すべきか、ほぼ定まるものです。選定基準に従って決定する、ということが必要ですよ。

 ――博多座としては異色の演目に思えるものも、興行が見込める良質なものであれば、積極的に上演しましたね。11年度に、堂本光一のジャニーズ公演「Endless SHOCK」が、その2カ月後に、初の自主制作作品、「時代劇版101回目のプロポーズ」が上演されたのを見たときは、本気でてこ入れするのだという固い決意を感じました。

 芦塚 「Endless SHOCK」は今年も上演しましたが、やはり大盛況でした。しかも、従来の博多座ファンとは違う若い世代の方が足を運んでくださいます。自主制作も、10月に「コロッケ錦秋喜劇公演」、3月に「水戸黄門」を上演しましたが、おかげさまで、こちらも収入が上振れするなど、成功しています。

 ――博多座の刷新をかけた自主制作企画ですが、昨年、正直に申し上げたとおり、最初の自主制作は成功したとは言い難かったですね。ただそのとき芦塚社長は、失敗の事実をとてもまっすぐに受け止められ、そこから学ぶ、という姿勢を明確に示されました。あのときは、こちらも本気で博多座の経営改善計画を見ていこう、と気が引き締まる思いがしました。

 芦塚 私が最初の自主制作企画で学び、得たことは、制作費が安くつくこと、役者、俳優の皆さんと協力しあいながらプロモーション活動ができること、そして、作品を他の劇場に売ることができること、ですね。それがわかったのも、未経験の業務へ第一歩を踏み出したからです。

 ――そして、失敗に焦点を合わせるのではなく、良かったことへ積極的に目を向けていらっしゃる。

 芦塚 失敗に目を向けることもありますよ。例えば、先月行なった「女たちの忠臣蔵」。東京では多くの方が観に来られたようなのに、博多座では思ったような収益が叶いませんでした。これは営業戦略が足りなかったのかなあと、今でも残念です。

 ――確かに、あの作品は、もっと観てもらいたい作品でしたね。興行時期の関係もあったのではないでしょうか。何しろ、「Endless SHOCK」と、「六月博多座大歌舞伎」の間でしょう。

0628_hakataza.jpg 芦塚 確かにそれもあるかもしれません。「Endless SHOCK」は先ほどお話したとおり。「六月博多座大歌舞伎」も、初夏を彩る博多の風物詩となっています。猿之助さんと中車さんが非常に良く動いてくださったこともあり、興行前から多くの予約をいただきました。また、歌舞伎と言えば、2月の「中村勘九郎襲名歌舞伎」も、松竹および出演者と一体になって、集客・宣伝合戦を繰り返し、売上を拡大し、確保できました。あれも12年度の成功事項です。

 ――それを考えると、出演者と一体になったPR活動は貴重ですね。自主制作だと、役者、俳優を御社が雇うという形式になりますから、協力してもらいやすいし、役者さんたちの方も、とても好意的に協力してくれているような感じがしますよ。

 芦塚 おっしゃるとおりです。皆さん、本当に気持ちよく協力してくださるのですよ。

 ――そのライブ感というか、自主制作作品は、出演者と観客の距離感が近いという感じがします。それが独特の魅力になっていますね。本来、歌舞伎もそうでしょう。とくに最近は歌舞伎界でも若者のファン層を拡大させることに熱心になっていますから、博多座の戦略とかみ合っているように思います。
 その一方で、文芸的な作品が、思ったより伸びないというのが気になりますね。昨年の「ジェーン・エア」も下振れですか。あれは、もっと評価されてもよかったと思いますが。

 芦塚 やはりそれぞれの演目に合った、新たな営業戦略を考えなくてはいけませんね。

(つづく)
【聞き手、文・構成:黒岩 理恵子】

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