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大さんのシニア・リポート~第12回 高齢者に優しいダイシン百貨店探訪記(4)
特別取材
2013年8月27日 13:08

 「住んでよかった街づくり」を提唱する西山には、「大森山王地域は家じゃなく、家族だ」という発想を持つ。「ここに住む誰もが幸せを感じ、住んでよかったという実感できるコミュニティ・ネットワークを構築すること」である。個人商店の集合体こそが、地元の消費者とコミュニティを図れる唯一の方法だと主張する。ダイシンに来れば、健康のことから趣味、暮らしに関すること、公的な相談事まで何でも可能になる。「ワンストップサービス」。買い物から生活一般、人生までをもクリエートできるという発想だ。

syokudou.jpg そのために、「食育」にも力を入れる。たとえば大手企業は、一括してパンをつくり、同じ味にして大量に販売する。ダイシンでは、小麦粉から中身までをすべて自社で賄う。「テナントを一切入れない」が"ダイシン流"なのである。すべての商品は、各売場の担当責任者が仕入れて店頭に並べ、自信を持って客に勧める。ここに売り手と買い手のコミュニケーションが生まれる。「企業が売りたいものを客に売る時代ではない。客が買いたいものを店が売る」というコンセプトに、ブレはない。

 ただ西山は"後継者"という難題を抱えている。自らは強い個性とリーダーシップでダイシン百貨店を軌道に乗せた。危機存亡を救うにはこれが最善手だったかもしれないが、後継者となると話が違う。
 西山は「毎日、私と付き合い、私のやることを見て、肌で私の考え方を理解してくれる人」と「西山の精神的コピー論」を真顔で展開した。「これが可能なら、最終的にM&Aに持ち込んでも、素晴らしいM&Aをしてくれるに違いない」ともいった。とはいえ、正直、簡単にはいかない。でも西山は、「できないなら、すべて"ウォルマート"でいいじゃないですか」と軽くいなした。世界有数のスーパ-コンビニに買収されてもいいというのだろうか。

 西山の本音は、"ホワイトナイト"を期待しているのだ。それも第三の優良企業への買収ではなく、ホワイトナイトを地域の住民に担ってほしいということなのである。こうだ。ダイシンには13万人の会員がいる。そのなかの1万人に、"ホワイトナイト基金"として1人50万円をダイシンに預けていただく。総額50億円。元本保証で、利子分はポイントで還元する。
 企業が株式を上場すれば株主の顔色ばかりを気にすることになるが、"ホワイトナイト基金"は客が出資者だから、客の顔色だけを気にすればいい。出資者も、「ダイシンは自分たちの企業」という思いがあるから、店に注文を付ける。こうすることで、客と店側とがより密接につながりを持つことができる。こういう"ダイシン流投資"を実施すれば、まさに「超・地元密着型投資」となる。西山は本気だ。これが可能になれば、公開的なソフトランディングが可能になり、後継者問題にもケリがつくと西山は考えている。

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 「モノを売る前にコトを売る」のも"ダイシン流"である。「ダイシンバス」もそうだし、「しあわせ配達便」(荷物を持ち帰れない買い物難民のために、無料で宅配する)、「ダイシン出前弁当」(ワンコインで日替わり弁当を宅配)など。すべて外部に委託するのではなく、ダイシンの社員が直接関わる。非効率なことは百も承知。客との会話のなかからさまざまなノウハウを学ぶ。コミュニケーションをとることで、次へつながるという思いもある。「親子体験! 稲刈りツアー」もそう。「山王夏祭り」は最大のイベントだ。「昭和のダンスパーティ」「盆踊り」「社交ダンス」「伝統的な子ども遊び」「芸能大会」「音楽会」と盛りだくさん。「オペラ」だってやる。今年はモーツアルトの『魔笛』を上演する。

 リーフレットには"大根買って医療を受けよう"と得意のキャッチコピーが躍る。ダイシン百貨店発行のポイントを使って、買い物から医療までを賄う。空き家を改造して、高齢者と若者・留学生が共同生活する「シェアハウス」、」空き店舗を使った原宿で盛況の「デザイン・フェスタギャラリー」(若手デザイナーの制作場所)、空きビル(施設)をキャンパスに転用して文化芸術の発信拠点にと、将来に向けての構想はふくらむ。すべてダイシン百貨店を「地域インフラ」として活用するためである。
 「日本一高齢者に優しい百貨店」とは、地元の未来を見据える力と実行力のある百貨店のことである。高齢者の存在を無視して、商売は成り立たない。

(つづく)

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<プロフィール>
ooyamasi_p.jpg大山眞人(おおやま まひと)
1944年山形市生まれ。早大卒。出版社勤務ののち、ノンフィクション作家。主な著作に、『S病院老人病棟の仲間たち』『取締役宝くじ部長』(文藝春秋)『老いてこそ二人で生きたい』『夢のある「終の棲家」を作りたい』(大和書房)『退学者ゼロ高校 須郷昌徳の「これが教育たい!」』(河出書房新社)『克って勝つー田村亮子を育てた男』(自由現代社)『取締役総務部長 奈良坂龍平』(讀賣新聞社)『悪徳商法』(文春新書)『団地が死んでいく』(平凡社新書)『騙されたがる人たち』(近著・講談社)など。


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