2024年04月19日( 金 )

【福岡市立幼稚園全廃】「住民意見?そんなの関係ねえ!」なのか・・・??(後)

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疑問3・教育委員会会議開会前に議案書を印刷に回す

 市総務企画局長は「教育委員会で意思決定しなければ上程しないので問題ない」と答弁しているが、否決して差し戻すことが可能なのか疑問だ。もし可能だと言うなら、同じ理屈で、廃止条例案を議会が否決しても構わないとも受け取れる。合意形成のプロセスを欠如させた福岡市の手法は、意見の対立をもたらすだけで、生産的ではない。

 倉元議員は、「教育委員会は、首長への権限集中を防止し、教育の自主性を保障するため一般行政から独立した権限を持つ」としている。実際には、教育委員会の組織・職員は、お役所の官僚が占めていて、独立性があるのは、わずか数人の教育委員だけでしかない。その教育委員会会議が形骸化して単なる追認機関として扱われている節がある。
 倉元議員が示したのは、議会への議案書をめぐる時系列だ。今回の廃止条例案をはじめ、議案書は、9月議会開会前に印刷されて議会に送付される。印刷所に発注したのは9月1日の昼なのに、教育委員会会議は同日の午後6時開会だと明らかにした。
 「教育委員会会議の決定など無視しようとしたことを証明している」(倉元議員)と指摘したのに対する、市総務企画局長の答弁が傑作であった。「仮に否決された場合には、修正する前提で発注したもので問題ない」というのだ。後から何でも言える典型だが、仮にそういう前提だったすれば、その事実を記した公文書を公開すべきだ。
 なぜならば、税金の使途にかかわるからだ。「否決されたら修正」というのは、印刷経費がかさむ可能性があると知ったうえで発注したことになる。「最小の経費で最大の効果」という原則に反する。原則に反することをやる以上、それはこういう事情があるからであって、税金の無駄が生じるかもしれないが、許容されるとあらかじめ議論、決裁されていなければ、無駄遣いを助長させる。

 これらの経過をみると、廃止条例案を9月議会に出すという至上命令のために、手続きの「順番が逆」でもお構いなしに突き進んだのか、それとも時間的余裕がないのに無理したスケジュールにほころびが出たのか、どちらかに見える。前者なら「住民軽視」「プロセス無視」であり、後者なら、潔く手続きをやり直して、あらためて合意形成のプロセスを踏むべきだ。
 8月に開かれた住民説明会では、「廃園を求める意見はなかった」(教育長)という。2年前に廃止方針案が示された際には、存続を求める請願署名が7万人を超えた。
 このまま、条例案の可決を目指す高島市長の姿勢は、安保法案を強行する安倍内閣に似ている。安保法案の答弁をめぐって100回も参院の審理が止まり閣僚が明確な答弁ができない内容でも、反対が国民の多数でも、採決を強行する政治手法に相通ずるからだ。
 高島市長に少しでも民主主義のプロセスを大切にする姿勢があるなら、市立幼稚園廃止条例案を撤回し、出直すべきだ。

(了)
【山本 弘之】

 
(前)

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