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2017年08月22日 10:41

欠陥マンション訴訟で浮き彫りになる久留米市の職務放棄(前)

事実誤認のある第1審判決

行政の責任を求める原告側の訴え

 8月23日に控訴審が行われる、久留米市にマンションの建替え命令を出すように求める義務付け訴訟で、被告側の久留米市が、市民の安全を蔑ろにした「職務放棄」と言える姿勢を示していることがわかった。

 この訴訟は、久留米市内のマンション「新生マンション花畑西」の区分所有者らが、同マンションの構造計算の偽装、不適切な設計などの問題点が、久留米市による建築確認において見逃され、是正されることなく、建築確認済証が交付されたとして、久留米市の責任を追及するものでもある。また、同マンションについては、上記の問題点に加え、ずさんな施工による数々の瑕疵を生み出した元請施工の鹿島建設(株)に対し、区分所有者らが損害賠償を求める訴訟も起きている。

 原告側の技術アドバイザーを務める協同組合建築構造調査機構の仲盛昭二理事長によると、控訴審において、被告の久留米市側は、「同マンションを除却せずとも安全を確保できることについて、法令を満足させる工学的根拠が示されず、法的・工学的な立証が行われていない」という。

 原告側の訴えが棄却された第1審(福岡地裁)の判決「原告らは、本件建築物の1階柱脚は非埋込形式柱脚であるが、1階柱脚の鉄骨量(鉄量の誤り)は規準に達していないため、保有水平耐力計算におけるDs値は鉄筋コンクリート造の値を採用しなければならないが、本件建築物は鉄骨鉄筋コンクリート造の数値を採用している旨主張し・・・」には、重大な事実誤認があった。そもそも非埋込柱脚における「鉄量」と「Ds値」は別々の問題で、1階柱脚の鉄量に関係なく、保有水平耐力計算におけるDs値は鉄筋コンクリート造の値を採用しなければならない。

 同マンションの安全性については、「構造検証の結果、耐震強度が35%であり、国が除却の目安としている50%を大きく下回ることが判明した。本件マンションの設計を行った木村建築研究所及びU&A設計は、この仮定の外力を少なく偽装することにより、本来必要とされる構造部材よりも小さな部材を用いた設計を行っていた。この偽装は、ごく単純な手法の偽装であり、これを見逃した久留米市の責任は重く、居住者の安全確保のために、一刻も早く状況を把握し、是正命令を発するべきである」と仲盛氏は警告する。

無視され続けている安全性

 しかし、久留米市は、「新生マンション花畑西」の危険な現状から頑なに目をそらし、「建替え決議は・・・区分所有者及び議決権の5分の4以上を要する」などと主張してきた。老朽化などの理由により建替えを決議するケースと異なり、同マンションの場合は、耐震強度35%と、地震で倒壊する可能性が極めて高い。耐震改修の必要性の認定を受けた区分所有建築物については、2013年の法改正により必要条件が、議決権の2分の1以上に緩和されている。2分の1以上の場合、原告側の区分所有者の数は条件を満たしている。

 本件マンションが危険な状態であることは、設計者である木村建築研究所・U&A設計と施工業者である鹿島建設に損害賠償を求めた別の裁判において、設計者が、何ひとつ、工学的な反論を行っていないことからも明らかだ。木村建築研究所の主張は、「建築確認申請書や工事契約書の監理者欄などには、社員が勝手に会社の実印を押印した。代表である私は押印していない」と、常識からかけ離れた内容であった。

 「是正命令後に、命令を受けた所有者が、建替えを協議し、除却の原因となった設計と施工の当事者に対して、建替え費用を求めれば良いのである。何も、久留米市に対して、建て替え費用を求めている訳ではなく、危険の除去を命令するよう求めている。除却後は、当然ながら、建替えという問題が付いてくる」(仲盛氏)

 1審判決では、「特定行政庁が既存不適格建築物のうち著しく保安上危険等であるものについて除却を命じれば、保安上の危険等を排除することができる。したがって、特定行政庁は、除却命令に加えてさらに新たな建築物の建築を命ずることはできない」「(特定行政庁が)建築物の建替えを命ずる権限を有するということはできない」などとされていた。言い換えれば、行政庁が建替えを命ずることは難しいが、除却を命ずることは可能と、裁判所は判断しているといえる。

(つづく)
【文:山下 康太】

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