2024年04月19日( 金 )

知られざる日本の反ドーピング事情(後)

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JADA偏重からの脱却へ

 組織運営や反ドーピング認証の不透明さで加盟企業の離脱が相次いでいるJADA。しかし、日本オリンピック委員会(JOC)、日本体育協会(JASA)、日本プロスポーツ協会(JPSA)を中心に設立された同機構は、国内のスポーツ業界団体のほとんどが加盟していることで、未だに大きな影響力を保っている。加えて行政の後押しもある。管轄官庁であるスポーツ庁は、8月31日に平成30年度の概算要求額を発表。「ドーピング防止活動推進事業」として、4億203万(前年度は2億101万円)の大幅な増額要求をしている。内訳は「アスリートを守り、競技大会における公正性を確保するために、ドーピング防止に関する教育・研修および研究活動を実施する」といい、「特に2020年東京大会に向けて、ドーピング検査員の新規資格取得者の増加や国際競技大会に対応できる検査員の育成に取り組む」としているが、「民間団体等へ委託」としており、その委託する民間団体はJADAに任せる可能性が高いと予想されている。業界関係者の声では「行政も国内の反ドーピングはJADAに一任しているということ。そこは変わらない」と話した。

 そうした「JADA偏重」といえる状況にあるなか、反ドーピングそのものについての研究や普及啓発するために、大学や企業間で新たなコンソーシアムを結成する動きがある。大学間では今年1月に、東京大学、東北大学、筑波大学、日本医科大学の4大学が共同で、反ドーピングの教育・啓発活動、研究のためのコンソーシアムを結成。ドーピングの使用撲滅を目指し、ドーピング研究に係るさまざまな分野(自然科学領域・社会科学領域)において研究の推進に取り組む。具体的には各大学の有する研究リソース(知見・人材等)を活用し、効果的かつ効率的なドーピング検出手法やアスリートの精神的・身体的負荷を軽減した検査の開発に向けた研究体制の構築を目指している。

 また企業間では、8月25日に、(株)ドーム、日本ハム(株)、協和発酵バイオ(株)、日本水産(株)、日本新薬(株)、スタミナ・スポーツ(株)、(株)ステアスの7社が発起人となり、LGC社が推奨する反ドーピングの認証プログラム「インフォームドチョイス」を推奨するコンソーシアム「インフォームドチョイス・コンソーシアム」(ICC)を立ち上げ、同認証の取得企業の加盟を促していく考えだ。

 一方でJADAも動きを見せている。先述した8月にスポーツ庁、JOC、日本スポーツ振興センター、アスリート、食品検査規格団体などを委員とした、スポーツサプリメントの認証制度を検証するための有識者会議を設置するという。設置趣旨については「国内外においてサプリメントの摂取を原因とするドーピング違反事例が発生していることから、サプリメントの安全管理、製造工程審査、情報公開などを含む国内の体制の有るべき姿を検証する」としているが、業界関係者からは「行政や団体と組んだ、実質的なJADA認証の啓発活動だろう」という声が聞かれた。

 東京五輪まで約3年。高額な加盟金を支払うことを条件とする特定の団体で分析・認証された、わずか3企業の商品しか反ドーピング商品として認められていないという状況から、海外の反ドーピング認証プログラムを取得できることで、参入障壁の高さで諦めていた中小企業の参入が相次いでいる。これまでの半ば利益相反や機会損失の感もあった日本の反ドーピング市場は大きく変わる可能性がある。

(了)

 
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