2024年05月02日( 木 )

知られざる日本の反ドーピング事情(中)

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加盟企業の離脱

 2020年の東京五輪を控え、反ドーピングの取り組みについて、大きな動きが起こっている。昨年10月、(公財)日本アンチ・ドーピング機構(以下JADA)加盟企業であり、スポーツサプリメントの製造販売や米国のスポーツアパレル大手のアンダーアーマー社の国内総代理店で知られる(株)ドームが、同社のプロテイン含有のスポーツサプリメントブランド「DNS」の全商品について、JADAの認証プログラムの取得を終了。他の国際的な反ドーピング認証に移行すると発表した。

 同社が認証プログラムの継続を取りやめた要因として、世界アンチ・ドーピング機構(WADA)では、サプリメントでの認証プログラムがあるわけではなく、JADAの認証プログラムについても分析結果も非開示。国際的な基準について不透明な点や、15年に改正された認証プログラムにより、商品はcGMP製造工場での製造を義務としているほか、以前は認証の申請時に分析するのみで、成分変更がなければ継続して認証を認めていたが、改正内容は半年ごとに分析を義務としており、その負担増もあるとしている。今年3月には、「ウイダーinゼリー」などの認証プログラムを受けている森永製菓(株)も、継続を終了したと発表。「契約期間満了」を理由にしているが、協賛金については支払いを保留していたというもあり、同様の理由である可能性は高い。

 JADAのサプリメントを対象とした認定プログラムは2006年に開始しており、当初は10社を超える企業が参加していたが、両社の離脱で認証を受けているのは、前述の大塚製薬(株)、(株)明治、味の素(株)の3社のみとなった。JADAの反ドーピング認証からの切り替えはすなわち、離脱を意味する。高額な協賛金や分析の不透明さがあるとはいえ、東京五輪を前に、独占的な反ドーピング認証を有する権利があるにも関わらず、両者離脱した背景には、JADA以外の認証機関が参入したことにある。ドームでは、WADAの指定検査機関であり、英国の国際的な反ドーピング認証機関のLGC社が運営する認証プログラム「INFORMED-CHOICE」に移行(国内では(有)バイオヘルスリサーチリミテッドが総代理店)し、「DNS」ブランド10商品で認証を取得したと発表。これに呼応するかのように、加盟していない大手中小企業がLGC社の反ドーピング認証の取得に動いており、最近では7月に、日本ハム(株)が鶏胸肉抽出物含有のサプリメント「イミダの力」で認証を取得している。

 さまざまな理由で加盟企業の離脱が起きているJADA。反ドーピングに関する品質確保や厳格な分析などの義務についてはコンプライアンスの観点で、品質・安全性を厳格に確保する目的としては正しい部分もある一方、加入条件や情報の不開示など、閉鎖的かつ運営の不透明さが明るみに出た状況となっている。

(つづく)

 
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