2024年04月24日( 水 )

全国平均を超える成長率 17年度の九州経済は未曽有の好調(前)

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 2017年度も後半に入り、実際の景気動向を踏まえて今年度の経済状況が見えてきた。「稀にみる好況」を引っ張っているのは、自動車と半導体の輸出、そして滞っていた設備の更新による設備投資の増加。好況に沸くアメリカ・アジア各国の影響を受けて好調に推移する今年度の九州経済について、九州経済調査協会(九経調)の柿野和平研究員にお話をうかがった。

成長率では全国平均を上回る

 ――まずは、九州の景気状況を大まかにお聞かせください。

 柿野和平研究員(以下、柿野) ではまず、GDP(国内総生産)に該当する、域内総生産(GRP)という指標からみてみましょう。九経調の2017年度(17年4月~18年3月)の九州の実質GRP予測は+3.5%。16年12月に発表した当初見通し(1.9%)から1.6ポイント上方修正しました。これは全国のGDP(大手調査機関の平均で1.8%)と比べると、大幅に上回る成長率となっています。
 全国的な傾向として、緩やかに景気が拡大しています。九州では、その基調を上回るペースで成長していることになります。

好調の自動車が輸出をけん引する

 ――では、成長の内訳はどうなっているのでしょうか。

 柿野 どの分野が経済成長率に寄与しているかというと、純移輸出(九州外との財・サービスのやり取り。主に輸出)と設備投資が大幅に伸びていることがわかります。
 順番に見ていきましょう。まず輸出です。当初の見通しでは寄与度にして0.5%と見込んでいましたが、見直しでは1.7%となり、大きく上方修正しました。要因はいくつもありますが、なぜ輸出入のバランスが改善したかというと、大幅な貿易黒字が生まれているからですね。とくに輸出が非常に伸びていることが要因です。全国では純輸出の見通しでは内需が拡大するために輸入も増えると予測されていますが、九州の場合は内需拡大を輸出の増加が上回るとみています。具体的な品目では、自動車と半導体ですね。この2つの伸びが全体を引っ張っています。

 とくに九州には、自動車と半導体の生産拠点が集積しています。どちらも海外への輸出比率が高いために、海外の景気動向に大きく左右されるのはよく知られているとおりです。自動車の輸出先は北米、つまりアメリカが中心。半導体はアジアです。半導体関連の電子部品は韓国や香港、半導体を作る装置は中国が輸出先として大きなシェアを占めています。これらの国と地域は17年は大幅に景気が持ち直しており、世界での需要が伸びています。具体的には日産自動車「ノート」が北米で大きく伸びていますね。また、半導体を活用したさまざまな製品を作っているアジア各国からの受注が伸びています。どちらの品目も、需要側面からの拡大が起きています。

 ――非常に大きな材料ですね。

 柿野 そうですね、全体的な貿易面での流通量が伸びています。さらにこれを後押しするかたちで、為替相場も円安で定着しつつあります。だいたい1ドル=110円で固定している状態です。16年度の見通しのなかでは、為替相場は緩やかに円高に振れていくと想定していました。しかし世界的な好景気が定着しつつあること、さらにアメリカも好景気に応じて利上げを行っていくことで、日米の金利差が拡大しています。アメリカの金利が高く日本が低い状態は、ドル高円安を誘導することが経験的に知られています。アメリカの実体経済が好調であるため、さらに利上げを重ねる可能性が高いと予測されています。金利差が一層拡大することで、円安基調は続いていくと考えられています。

 ――輸出はアメリカを中心とした諸外国の景気に大きく左右されますが、アメリカの好景気は今後も続いていくという見通しでしょうか。

 柿野 そういう基調でよいと思います。さまざまな経済指標でよい結果が出ていますし、IMFなどの見通しを見てもプラスで推移するという見通しです。実体経済についても大きな懸念材料はありません。現状の輸出のプラス幅はほぼピークに近いと見ていて、高水準で推移していきます。ほぼ過去最高の水準できていますから、来年度も前年比でプラスかというとそうは言い切れませんが。

 ――自動車の輸出では日産自動車が挙がりましたが、最近話題になった検査偽装についての影響はどうでしょうか。

 柿野 聞いている話では、海外向けは生産体制や検査の方法なども違っているということなので、輸出を考えるうえでは関係はないのではないかと考えています。

(つづく)
【文・構成:深水 央】

 
(中)

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