2024年04月24日( 水 )

全国平均を超える成長率 17年度の九州経済は未曽有の好調(中)

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 2017年度も後半に入り、実際の景気動向を踏まえて今年度の経済状況が見えてきた。「稀にみる好況」を引っ張っているのは、自動車と半導体の輸出、そして滞っていた設備の更新による設備投資の増加。好況に沸くアメリカ・アジア各国の影響を受けて好調に推移する今年度の九州経済について、九州経済調査協会(九経調)の柿野和平研究員にお話をうかがった。

リーマン・ショックで滞った設備投資が好調

 ――次に設備投資です。

 柿野 九経調では(株)日本政策投資銀行の調査を重視しています。日本政策投資銀行の「九州地域設備投資計画調査」によれば、17年度の九州での民間設備投資は25.2%増加するとされています。これは全国平均の11%を上回る数字で、日本の各地方で比較すると最も高い伸びとなっています。リーマン・ショック前に行った設備投資によって取得した設備を、その後の不景気のなかで更新できなかった企業が数多くありました。そのため、設備については不足を感じている企業が増えてきました。しかし人手不足などから工場を建設する際の工事単価も高くなっています。計画を立てても採算が合うか、このタイミングで実行できるかということも下振れのリスクとして存在しています。

 ――リーマン・ショックの時期に滞っていた設備の更新もいずれ一巡しますよね。

 柿野 そうですね。一巡すればいったん需要は落ちると思います。そのタイミングがいつになるかははっきりとはわかりません。どの程度投資をすれば設備の需給関係がプラスになると判断されるかということと、今から計画しても結果として後ろ倒しになっていくので、そこをどう考えるかというところですね。

人手不足、不動産需要 他の要因はいかに

 ――人手不足は相変わらず深刻ですが、この要素が与える影響は大きいでしょうか。

 柿野 建設業者の場合、一部で人手不足のために案件を断らざるを得ない状況が出てきています。この環境がすぐに改善されるとは考えられませんね。ただ建設業の場合は、働く人の年齢構成が変化し、相対的に若手が少なくなっている状態ですから、そこも加味して考える必要があります。

 ――人手不足については、これはもう景気どうこうということではないですね。

 柿野 そうですね、これはもう景気循環ではなく、人口の構造の話になりますから。ライフスタイルの問題にかかわってくる話だと思います。

 ――ホテル需要、マンション需要の今後はどうでしょうか。

 柿野 ホテルについては、インバウンドが引き続き好調であることから今後も高い需要が続いていくと考えてよいと思います。宿泊に関する統計を見ても、熊本地震によるイメージダウンからは回復したと見ていいようです。住宅などの建設については、貸家の着工が一服しつつある数字が出てきていますから、今後とも注視していく必要があると思います。これまでのシナリオ通りにいくかどうかはなんとも言い難いですね。

 ――福岡市街地のマンション需要はかねてからバブルだという言われ方をしていましたが、そろそろ一段落というところでしょうか。

 柿野 やはり、あとはどれだけ潜在的なマンションオーナーがいるか、どれだけ発掘できるかということにかかってくるのではないでしょうか。マンションについてはオーナーありきという面が大きいと聞いていますから。

(つづく)
【文・構成:深水 央】

 
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