2024年04月25日( 木 )

全国平均を超える成長率 17年度の九州経済は未曽有の好調(後)

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 2017年度も後半に入り、実際の景気動向を踏まえて今年度の経済状況が見えてきた。「稀にみる好況」を引っ張っているのは、自動車と半導体の輸出、そして滞っていた設備の更新による設備投資の増加。好況に沸くアメリカ・アジア各国の影響を受けて好調に推移する今年度の九州経済について、九州経済調査協会(九経調)の柿野和平研究員にお話をうかがった。

 ――公共投資はどうでしょうか。17年度は熊本地震の復興という大きなテーマがありました。

 柿野 ほぼ予定通りに進行している、というのが現状です。発注率なども当初の計画通りとみていいでしょう。復興事業についても、大きな遅れはないようです。相当な努力が払われたうえで、計画通りに進んでいるという印象です。ヒアリングしていると、「何とか予定通りやろう」という、関係者の心意気を感じます。復興工事自体は3年ほどのスパンで発注が続くということですので、引き続き出来高ベースでは過去に比べて高い水準が続くと考えられます。

 ――民間の消費については好調でしょうか。

 柿野 前年比ではプラスで推移してはいます。しかし九州は全国よりも高齢化が進んでいますから、それだけ全国に比べると伸びは鈍化しています。実感として悪くはないですが、額面ベースでは全国よりも低い水準となっています。

変化する人口動態が雇用者数を左右する

 ――雇用者の数でみると、やはり右肩下がりにはなりますか。

 柿野 国勢調査では15~65歳の人口が減っているという結果が出ていますから、むしろこの程度の下げ幅でとどまっているのは大いに健闘していると見ていいのではないでしょうか。5、6年前だと、もっと減っているだろうという予測もありましたから、実際には女性やシニア層の労働参加が進んでいることで労働人口の減少は緩和されているとみています。

 ――今後はより一層の労働参加を促す必要があるということでしょうか。報酬額についてはいかがですか。

 柿野 最低賃金の影響が出るパートの賃金については向上しています。最低賃金は毎年20円以上上がっていますから、今後も上昇していくでしょう。しかし正規雇用の賃金も上がるという状態にはなっていません。正規雇用者の賃金まで上昇するのはやはり難しいようです。九州は全国と比べるとパート層が多いので、パートの賃金が上がると全体の報酬額にはより大きな影響があります。自動車の販売台数などは増えていますから、緩やかに持ち直しているのが実感ではないかと考えています。

(了)
【文・構成:深水 央】

 
(中)

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