2024年04月19日( 金 )

耐震性に疑問、豊洲市場の黙殺された致命的な問題(2)

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協同組合建築構造調査機構 理事長 仲盛 昭二 氏

問われるJSCAの存在意義

 市場問題PTにおいて日建設計は、「既製品の柱脚を使用しているので、Ds値の割増しは不要」と説明しています。これは、「非埋め込み形柱脚におけるDsの決定方法を無視した不正にDs値を低減した設計」に対する指摘を、「既製品の柱脚を使用しているのでDs値の割増しは不要」と、問題を巧みにすり替えた説明です。

 PT出席者は、日建設計のマジックに簡単に騙されたことになりますが、PTには、日本建築構造技術者協会(以下、通称の「JSCA」と表記)の森高英夫会長が、建築構造の専門家の委員として、出席していました。
 森高委員が構造設計の実務経験者であれば、日建設計の説明が、不正な設計を隠すための方便に過ぎないことを容易に判断できたはずです。しかし、森高委員は、日建設計の説明を咎めることなく説明を容認した形となっています。

【JSCA森高会長のPT第1回会議での発言】

 「私は、このプロジェクトには、日本建築構造技術者協会の代表として参りました。施設建物の構造安全性、とりわけ耐震安全性について第三者的な所見を述べてほしいと東京都から依頼を受け引き受けました。
 市場の特性から、通常、建築基準法で定められている耐震性能の25%割増を目標に設計されていますので、かなり余裕を持って設計されていると思います。
 いずれにしても、構造設計のフレームの計画、これは設計者、意匠設計者やいろいろな方と、柱のスパンなどを決めて、実際に設計されて、それが妥当かどうかを構造計算で確認されるという作業をされているので、構造計算書や図面は、恐らく、東京都の建築指導課で厳密なチェックをされているし、例の姉歯事件以降、構造適合性判定を第三者でチェックしていてダブルチェックされているので、ある意味では、それを経た資料であるという前提で我々は確認したいと思っています。
 皆さんが最も心配されている、東京に首都直下地震が起きたら市場はどうなるか、そういうことも考えながら今回の課題に取り組みたいと思っています」。

 構造設計者の団体であるJSCAの会長という専門家の立場で、PTに出席していた森高委員に求められていた役割は、市場の建物が法令規準に適合し法的・工学的に安全な建物であるか、建築構造専門家として意見を述べることであったはずです。その役割のために税金から費用が支出されているのです。

 「おそらく、東京都の建築指導課で厳密なチェックをされている」と、JSCA会長である森高委員は発言していますが、建築基準法施行令への適合さえもチェックしていない東京都の審査が、何を以って「厳密なチェック」と断言できるのでしょうか?構造設計者の団体の代表の発言とは信じられない程、低レベルで虚偽の発言です。全国3,009名のJSCA会員が、森高会長の二枚舌の発言を聞けば、大いに嘆かれるのではないでしょうか?

【JSCA森高会長のPT第2回会議での発言】

 「日建設計は設計の責任を負う立場で安全性を宣言されており、私も、別に問題ない。同意します」。

 この第2回会議で、森高委員は、日建設計による、論点をすり替えた説明について、「日建設計は設計の責任を負う立場で安全性を宣言されており、私も別に問題ない。同意します」と発言されています。日建設計は、責任を回避したいから、論点をすり替えた説明で煙に巻こうとしているのであり、この行為を擁護する森高委員は、日建設計寄りのイエスマンに過ぎない存在であり、公費により開催されてPTの趣旨に反するものです。
森高委員は、豊洲市場の構造計算書の内容を見られていないか、見る能力を備えていないのではないかと思われます。

【JSCA森高会長のPT第8回会議での発言】

「築地は、耐震性の低い建物が存在しながら仕事やられているわけですよね。僕の立場は、構造設計者の集まりの代表ですが、建物の安全安心をいかに確保するかという立場で活動しています。築地の現状を見ていると、いつ来るかもしれない首都直下地震が来たときには相当大きな被害が出るかもしれない、という危険な状態で仕事を続けられている」。

 この第8回会議での森高委員の発言は、老朽化し耐震性が低いと言われている築地市場で、現在、仕事をされている市場関係者の安全面を憂慮した発言であり、人として、当然の意見だと思います。
この森高委員の発言と、第1回、第2回のPT会議での、日建設計や東京都の擁護に徹した森高委員の発言が、同一人物の発言とは思えません。

 構造設計者の団体であるJSCA(日本建築構造技術者協会)の会長である森高英夫氏は、安井建築設計事務所の執行役員です。安井建築設計事務所は、日建設計と同じく大手の設計事務所(社員数:327名)であり、多くの官庁工事の設計を手掛けています。建築設計業界における立ち位置としては、多少の規模の差はあっても、日建設計と全く同じような位置にあります。故に、日建設計を擁護することは、当然、安井建築設計事務所を含めた設計業界を守る目的が大きいと思います。しかし、この行為は、設計者の誇りを捨て、国民を欺く行為に他ならないのです。

 行政や業界を守るために、国民を欺くような方は、業界団体の会長としての資格は有していないと思います。会長の二枚舌の発言が、団体そのものの意思であるならば、この団体(JSCA)も、直ちに解散すべきです。解散しなければ、今後も、行政や業界を守るために、国民を欺き続けることでしょう。
立場的な理由からか、回答が迷走している、PTの森高委員(JSCA会長)は、私の指摘に対して反論があれば、反論をしていただきたいと思います。

 現役の構造技術者が、豊洲市場の構造計算書を見れば、躊躇することなく、私と同じ指摘をするはずです。少なくとも、「構造安全性は満たしている」というコメントは、絶対にできないはずです。もし、森高委員が、構造計算書の内容を見た上で、安全とコメントしているのであれば、構造技術者の団体であるJSCAの会長職を辞された方が賢明かと思います。

(つづく)

 
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